「僕も詳しくは知りませんけど、でも街をつくるゲームなら昔ハマったことはありますよ。災害とかゴミの問題とか、電力とか、公害に就労環境とか、色々進めていくと問題が発生して、後半は街づくりよりも不具合と問題の対処に労力を割かれて、てんやわんや」
「お前、あんまりゲーム好きをアピールするなよ」
「いけませんか?ただの趣味ですよ、それに今はもうやっていません」
「市民権を得たって勘違いしているみたいだけれど、周りから斜めに見られている感覚は持ち合わせているんだろうか、そういう奴らって?」
「相田さんは、人の目を気にしますからね」
「まっ、否定はしないけど、よくそれでも生きていられるなって思って」
「その発言、人権問題ですよ」
「一般論さ。まだまだ世間の目は認めていないのさ。否定しているわけじゃないけど、広く認められるにつれて、態度が大きくなりつつあるような雰囲気がひしひしと伝わってくるんだ。大勢っていうのはどれも同じなんだろうな」
「まさに戦争です」種田が空間を切り裂く鋭さで後部座席の会話を割り込む。彼女は普段の無口がこうした一言に重みを持たせる効果によって、計ったように端的な言葉で会話を終了させる。
「こちらが立てばあちらが立たずかぁ……」相田は哀愁を漂わせる口調。語尾は消え入りそうなぐらい小さい。
「そういえば、詳しい遺体の身元はI西署の警官に聞いていませんでしたねぇ」鈴木が思い出す。「バスに乗っていたっていう証言を真実と仮定すると、この近辺に仕事場があったか、自宅や長時間滞在する建物が存在するはずです。ああ、でも車内っていう可能性もあるか」
「鑑識はO署を出て到着までは一時間はかかる。空いた時間は有効利用するべきだ」熊田はギアを入れる。車がバック。「鈴木、後ろを確認してくれ」
「ああっと、待ってください。一台来ました、はい、オッケーです」
「どちらへ?」種田が尋ねる。
「バス会社だ、運転手に話を聞く。所在地を調べてくれ」
ぐるりと目を回す種田にちらり横目で見やってから、熊田は臨港沿いの通りへ車を走らせた。