コンテナガレージ

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適応性3-4

「警察への窓口は今日の依頼もそうですが、私が適任。最も動き回れる。さらに他の組織へ行き来が可能な人材、おいそれと警察官として、殺害してしまえたら、それはおのずと私と組織の関係性を認めることになります。私の身辺を調べないわけにいきません、引っ張り出されたくはない情報もね。警察組織に属さない、権力に縋らない人たちは立ち上がるでしょうし」

「がんじがらめだわ」

「糸の切れた凧は風によって、そしてその高度によって付与された解放の歓喜を味わい、風が止むと落ちてしまう。糸も引っ張られるわずらわしさは反力。一人で、飛んでいるという幻想を如実に突きつけられる。私はまだまだ、わずらわしくても命は惜しいです」部長は空き缶を手に掴み、腰を上げた。彼女を見下ろす。「次に顔を見るのは年明けですか?」

「一年を十二に分けた考えとそれを遵守しなくてはならない云われは、互いの立場を離れないように保つ凧とそれを繋ぎ糸を引く人間の関係そのもの。ただの一日です。年が明けようとも」

「安心しました」

「なにがです?」

「いいえ、共感という感情に出会えたのは久しぶりでしたので」

 去り際、別れの挨拶をキャンセルしてその場を離れる。公園を出た所で言われた。

「O署の管轄で死体が見つかるように取り計らいました。所持品も捜査権もあなたが調べやすいようにです。望んだ結果をお待ちしております」

 自販機脇の水色のごみ箱へ空き缶を投入した。操られているふりは難しいものである。

 操作されている方がどれだけ楽でいられるか、赤・緑・白がスーパーの入り口に彩りを撒き散らす。

 二人以上、連れ立って歩くお客を避けて部長はすっかり冷え込んだ車に戻った。

 楽しいでしょう、と強制する過去の笑顔が浮かんだ。