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非連続性1-3

 残された刑事四人が全員、部長に説明を求め訴える視線で言葉を口にするのを待っていた。過去の出来事はあまり口にしたくはないが、避けられない事態だろう。部長は風の収まったのをいいことに、タバコに火をつけた。

「昔の同僚だよ、先輩といっても年齢がひとつ上なだけでキャリアは一緒だ」部長は煙を頭上に吐いた、種田への配慮である。「被害者の身元は?」

「所持品は一切ありません」種田が一歩後退して答えた、あわせて部長も下がる。歩道を占領する刑事たちであるが、通行人は一人もいない。町全体の建物は接近を拒むほど離れ、しかも生活空間の静けさは微塵もなく、道は産業道路そのもの。

「死亡した女性の物かはまだ判断しかねますが、忘れ物が届けられました」

「届けられた?」部長は訝しげに繰り返す。

「女性の死亡記事を読んだ男が忘れ物を届けたのです」

「その忘れ物は?」

「鑑識に回しました」

「そうか、入れ違いだったか」部長は思わず本音を漏らしてしまう、半分は勘のいい者たちへのフェイクである。

「また事件ですか?」鈴木がきく。

「ああ、まあ、そんなところだ。それでガイドブックから何か情報が得られたのか?」

「いいえ。変わったガイドブックというか、出版社にも問い合わせてみても、ああ、I市のガイドブックなのですが、観光地でもないI市のガイドブックは発売していないとのことで。しかも、紙の質は出版社が使うものとあまり変りはないように感じられて、模倣を企てたんじゃないでしょうかね」