コンテナガレージ

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仕事(フリーライター)、日常、小説、その他諸々

非連続性2-1

 ヘッドライトの照明を反射する三十センチほどの黒と黄色の支柱を起点に中央分離帯で器用に方向を変えた青いバンはアイラから遠ざかり、その代わりに彼女が乗る車が隊列へと加わった。彼女の車が停まったために後方の車両が数台もたつき、さらなる後続車は車線の変更に伴う速度の低下を強いられ、車線は軽く渋滞しかけたが、信号が変り、後続車が切れると流れは再び元に戻った。海岸線へ出て臨港の通りに復帰、現場を通り過ぎて現在の位置に至る。

 アイラは顔が出せる分だけ窓を開けて、警察の動向を観察した。彼女にしてみれば、妹の仕事姿を見られる期待は叶いそうにもない現実と決め付けていたので、制服警官を囲む後姿に見入ってしまい、寒風の流入をついうっかり忘れる。気づくと、コートと助手席の一部が雪にまみれている。彼女にしてはめずらしく、非礼を詫びた。

「ごめんなさい、中に雪が入ってしまったわ」

「大丈夫です、……って僕の車ではないんですが、謝るほどのこともでもないですよ」山遂セナは歯を見せて笑った。綺麗に整う歯列は海外では標準的な教育的配慮である。親の経済状況が一定の水準に達すれば、ほぼすべての子供が成人までに整った歯を獲得する、海外生活の体験者故の考察である。日本は海外に比べ、総じて昨日から今日までに見た日本人では山遂が群を抜いた整いよう。あの子も綺麗であるが、矯正はおそらくしていない、自然な形状が残っていた。

「ガイドブックは覚えている?」アイラは雪を払って尋ねた。目を見つめる質問は相手に圧力を与えてしまう。だから、あえて視線をはずしてみた、彼女の配慮。

「内容ですか?記憶力は手帳に書いて忘れないようにしている程度ですからね、そうですねえ」山遂は迫ったルーフの模様に目をやる。「地図はこう、横に長く、次のページに引き継ぐ形で描かれてました。下のスペースには施設の情報が書いていましたね」

「名称は覚えていない?」

「すいません、カタカナや英語は書いてあったと思いますけど、思い出せません。何しろ、忘れ物だったのでしかも亡くなった人の物をじろじろ隅々まで読み込むのは、ええ、気が引けて……。さらっと目を通したのは、渡し損ねた電車中、しかも立っていてたために、すぐに鞄にしまいました」

「車内は混んでましたか?」

「それなりには。しかし、人に圧迫されるほどの満車率ではありませんよ、つり革にも掴まれましたし」

 パトカーが動き出す。