コンテナガレージ

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仕事(フリーライター)、日常、小説、その他諸々

非連続性2-3

「あぁあ、はい。私は口が硬いですから。それにアイラさんの不利益になるようなことは、私の仕事や会社にまで及びます」

「現物は手元にないから、端末で撮影した画像を見せる」端末をコートから無造作に取り出す種田は、指先の動きを止めて、振り返って、彼女たちに断りを入れる、そして顔を付き合わせる刑事たちの元へ戻った。どうやら、許可を申請しているとみえる。二言、種田が説明、簡単に顎が引かれた。意見を求めた三人のうち、一人の男性がボスらしい。

 切れそうな男。

 外見的な特徴はほとんどないといっていいだろう、目立たないことを要求され続けた末の行き着いた姿か、あるいは、目立ちすぎる本性を隠すための外装。

「はい」戻ってきた種田が画像を表示させた端末をこちらに手渡した、彼女は白い手袋を嵌めていた。防寒用ではなく、警察が装着する現場を荒らさないための仕事着である。

 太陽の光を手でさえぎりながら、アイラは端末の画像に目を奪われた。

 どこで私の思想が漏れたのだろう?

 漏れた?

 いいや、そんなことは信じがたく、現実的な説明には決してなりえない。

 隣で山遂も遠慮がちに端末を覗き見る。彼らの会社から正式な依頼を請け負った時点でも、商業施設の構想は雛鳥、違う、卵の段階にすら到達していなかった。イギリス、グローブの自宅、仕事部屋の黒板にすらアイディアの断片は書き留めていない。

 そう、どこに書き留めても、出力の作業はすべて私の頭の中、なのに、どうして、何で、疑いもしない私のアイディアが克明に描かれているの?しかも、これから思いつくはずの、創造の先が書いてあるなんて……。

 彼女はあっけにとられ、開いた口がふさがらなかった。

 多分妹は私の表情で事態を見抜いた。私の来日と職業それに両の足で立つ地点こそが仕事場なのだから推測は十分すぎる材料が揃っている。

 しかし、驚愕の事実だ。私の考えすら遠く及ばない、私が抱える案は公表するに値しないガイドブックの完成度、クライアントを納得させ共同で作り上げたとしても、このガイドブックに敵うものか。

 次元が違いすぎる。常識や慣例はすべて排除されて考え出されたのだろう。

 利便性は完全に吹き飛んでる。

 だって、トイレが一箇所に集中しているんだもの。お客を神様のように扱う至極丁寧な対応の日本的な仕組みはまったく見当たらない。