コンテナガレージ

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仕事(フリーライター)、日常、小説、その他諸々

非連続性2-4

 指先を広げて画像を拡大する。

 人の流れを熟知……、設計者は一体誰だ?

 アイラは唸る。

 海上交通も整備されている、船上と桟橋が建物に直結。朝鮮半島や中国大陸、ロシアとも周航距離は近く、時間に余裕のある、飛行機の移動に飽きたお客には興味深いルート。ここでも利便性はやはり排除されつつある。短時間の利用は、ビジネス。対して旅は時間的なゆとりを欲するのか、と彼女は思う。またひとつ変更の余地ありだ。

 めずらしく他人の意見に左右されている私がいる。前だけを見て、先頭を走っていた私は、周囲を歩く速度で流れる景色を見てはいなかった。厳密に私の考え方は他者との比較なんだけれど、人が選ばない選択肢を選んできた、それだけのこと。そこに勝機と価値と期待を見出していた。

 正直、比較による価値の創作は飽きている。コンセプトがぶれないのは確か。それでも、隙間を狙った価値はやはりそれ以上には昇華しない。一人歩きをしてくれないのだ。私が欲する光景はまったく新しい価値。だけれども、人が利用する空間や住居だから、先鋭的過ぎては馴染みが生まれないの。

 とはいうものの、この画像は不安を解消しているように思える。斬新で見たことがなくても感情は沸きあがり、しかもうるささや居心地の悪さを感じさせないのだから、感心せざるを得ない。 

 アイラの画像のめくりに山遂の目が追従する。彼は彼なりにかすかな記憶の細片と画像を照合しているのだ、とアイラは思う。あまりにも顔が近いのは、光の反射が角度によって画面を見えづらくし、少しのずれが視認を奪って画面そのものが見えなくなるためだろう。

 少しズレが視野を狭める……。アイラは、指を画面に触れる直前に止める。どの角度からであっても、この地図に描かれた施設は、物語がつむぎ出される。まるで、出入り口を共有した迷路みたい。

「はい」アイラはすべてが見透かされたと判断、取り繕いは諦めた。見終わった端末を種田に返却する。

 白い手が端末を受け取った。「満足した?」

「本来の満足なら満たされたわ」あえてその後に続く言葉を彼女は発しない。飛行機雲のように排出する煙を種田が追うかどうかを観察したかったのだ。しかし、種田は巧妙に真意を見せないでひた隠し。もっとも何も感じていないのかもしれない。

「山遂さんのご意見は?なにか我々に話したこと以外で思い出したことがあれば、おっしゃってください」

「警察の方とアイラさんの前でなら、言えるかな」