コンテナガレージ

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非連続性4-4

「ずいぶんと世界規模の話に発展してます」

「たいして世界も警察もお前と俺も、関係は単純なもんだ」

「組織に属せ、とまでは言いませんが、力を貸すアクションは起こしておいたほうがよろしいかと思います」

「馬鹿で短絡的な奴も嫌いだが、畏まった口調で丸め込む、役人の顔はもっと嫌いだ」

「役人すべてが悪人、と決め付けた言い方ですね」

「近寄ってきた人物にはこちらから罠を仕掛けている」

「罠ですか?」

「大きな仕掛けから些細な日常会話の仕掛けまで。はっきり相手を決め付けることをしたくはない。だから、相手にチャンスを与えているつもりだ」

「私にもですか?」

「将来を見据えて生きている、落ち着いている、それに適度に力が抜けてもいるか、痩せている、タバコを吸う、友人は少なめ、またはゼロに等しい、独身、他人の話をまったく聞かない、入り口で室内の配置に目を配る、警察に馴染まず権力に無関心、しかし報酬に目がくらむ、あとは目を見て話さない」

「ええっと、これは公開裁判か何かですか。だったら反対尋問を」

「認めているわけではないが、決断し切れない、これが答えだ」

「つまり、情報はいただけない、ということですか?」

「……そこが難しい所だ。部屋を訪れたお前の情報は知れ渡る。数十分前に鑑識は遺体の報告を上層部に送っていた。誰でも連想は容易い。あいにく資料はデータで打ち込み、前のように紙の資料はめったにお目にかかれない。うっかり資料を開いたままトイレに立てないのさ」神は底の見えない灰皿にタバコを押し付ける。「聞かれている可能性も大いにありうる、ねえ、そうですよね、だれかさぁん」

「廊下まで聞こえてますよ……、あっ、どうも、こんちには」鑑識の女性が入ってくるなり神に手厳しい言葉を浴びせたが、部長を見つけ態度が豹変する。署内で部長は神様のように扱われていて、出会うと幸運が訪れるとまで言われるのだ。つまり、彼女の反応は部長の珍しさを超えた先、自身の幸運による喜びと解釈するのが妥当だろう。

「お邪魔してます」部長は立ち上がったついでに、退出を宣言する。「それでは、私はこの辺で」神の鋭い両目が痛いほど、無言の意見を言っているようだ。

「はああ」神はあくび、間延びした声で言う。「なあ、遺留品のガイドブックの鑑定は終わったのか?遺体の作業と平行して扱っていたようだけど」