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非連続性6-2

時に人はそれにトラウマなんて呼称を与えるから、引っ掛かりが肥大化するのだろう。何よりも鮮明に思い出せる、だから記憶に刻まれる。時間の解決という他の体験で薄める方法しか、私の中ではその当時確立されていなかった。だから、あの子と離れたのは幸いで最適なタイミングだったと改めて思う。あのまま、隷属された環境に、もしあの子の代わり実家で私が生きていたら、……考えたくもない想像だ。たとえ引き離されても、両親が植えつけるトラウマに支配されただろう。

 こんなときでも、アルコールは飲まない。

 アルコールの摂取は積極的な意識変革を施すことなく、自然と距離を取っている。

 夜景に高層マンションでしかもカーテンを開けている状況に合うのはアルコールではあるが、隠された感情を引き出すつもりもないし、感情は隠れていない私である。

 商業施設の構想は一ではなくゼロからやり直し。だけど、十分収穫もあった。これまでの構想を使わなければいい、という制約である。世界各地を相手にするとそれ相応の洗練は日常茶飯事。自由な発想を求められるのが、本来の建築だと思ってはいる。しかし、建物は視界に入ってしまうために他者の配慮にも気を配らなければいけない。そこで、自由と縁を切ってしまう。断ち切った痛みに耐えうるあからさまな裏の表情をそっくり利用するのは狡猾、まったく私にとって面白みにかける。

 雲が過ぎ去ったらしく、上空に月が出迎えた。受け手の勝手な思い込み。

 ええ、うん。アイラは首を大きく縦に振った。液面がゆれる。

 押し付けるデザインではなく、見出すデザインだ。

「いつも同じ面を見せているくせになかなかやるじゃないの」アイラは月に遠慮がちにそして、微笑を臆面もなく携えて、言葉を吐いた。 

 コンセプトが決まれば、流れるのみ。体力勝負は小まめな休憩が大切。

 テレビをつけてみた、知らない人物が笑いを取っている、知っている者にとっては面白いんだろう。

 またひとつ学習。

 寝室の毛布を抱え引き摺りソファに帰還。

 足を折るとちょうど私が隠れるサイズ、座面に体が沈む。

 毛布をかけ、リモコンで照明を落とした。

 テレビはとっくに電源を切った。

 つるつるした肌触りを感じて、休息を願った帰国初日である。