コンテナガレージ

サブスク・日常・小説の情報を発信

回帰性2-3

「効率化ではなく、失敗の対処です」

「同じでしょう?」野太い声と大きいボディアクションで男は問い返した。

「二度同じミスを繰り返さないために従業員を叱らないで欲しいのですよ」

「それでは一向に問題の箇所は改善しません、何をおっしゃっているのわかりかねますが?」小娘が何を言っているのか、目は明らかに言葉を語る。

「犯したミスの原因を探り、その対処を明確に示すことを行って欲しいのです。感情に任せた罵声はやめて欲しい」

「それでは従業員は従ってくれませんよ、特に若い世代はね、優しさをこめて伝えるとそれを真に受けてしまう。遠回しに言っていると気がつかないのです。多少の圧力は必要不可欠、と私は考えていますよ」

「強制はしていません」アイラは首をかしげた。「もし仮に暇を持てあましているのであれば、ということです」

「では、見込みはどの程度を予測してますでしょうか?」

「予測?設計の完成度合いのことですか?」

「はい」

「ゼロ。しかし、必ず百パーセントに達する。そうでなければ、仕事は請けません」

「自信たっぷりにおっしゃいますね」

「それだけの仕事をしてきましたから。あなた方もその功績を辿って私に依頼をしたのでしょう?だったら、信頼の上に契約が成立しているはず」室内の空気が止まった、アイラに視線が集まる。「不毛な会話ですね、やめませんか。別の話題にしましょう。今日の話し合いの場は単なるの顔合わせというものですか?あまりこちらの文化には詳しくはないのです」アイラは山遂に意思を送る。彼は一度、上司たちへの遠慮で息をついてから答えた。

「はい、概ねアイラさんの解釈で合っています。構想の進捗状況を知りたかったのは、正直に言えば、アイラさんの言うとおりです」

「以前もこの土地に建設計画が持ち上がっていたとお聞きしました。私は土地の広さや建築制限など設計に関する事項を除き、あえて現場周辺の情報は取り入れない。しかし、昨日、現場を見学した際にいわくつきの土地であると知りました。私に黙っているつもりだったのでしょうか?」

「山遂っ!」上司に腕を小突かれる山遂を助けるようにアイラは正面に座る山遂の上司に訊いた。