コンテナガレージ

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回帰性4-3

 一人残っていた常連客も昼食を摂るのだろう、会計を済ませて店を出た。

 店には美弥都一人だけである。からからと天井の羽が、温まる空気を循環させている。正午を迎えて、美弥都はストーブの火を最小に設定、二階のストーブも同様に、そして二階上がったついでに、窓を開けて換気すると、黒のセダンが配送のトラックをやり過ごして、店の駐車場へ乗り入れた。セダンはかなりの台数の車を塞き止めていた様子で、橋を越えコンビニ付近まで車が連なっていた。

 二人組みはO署の刑事。二日前にも店長の留守を見計らったように来店し、事件の概要を話して、彼女に意見を求めたのである。解決した事件を掘り下げているらしく、腑に落ちない点を彼らはよく探している、美弥都は彼らの本質を見抜いている。単純な人の死を越えた高次元の現象を意識。彼らの部署は特殊であると、本人たちが話していたのを聞いていた美弥都である。通常の対処が彼らには求められていないとも考えられるか。美弥都は、階段を下りる際に刑事たちへの興味をあっさりと捨てた。特に関わりあうべき事柄ではない。

「こんちには」熊田、種田の二人がカウンターに腰を下す。声を発したのは熊田のほうで、女性の種田は黙っている。種田の髪が若干短く切られていた、隣の刑事は気づいただろうか。美弥都が予想するに。髪形の変化には触れていない。種田が無愛想に膨れているからでなく、それは彼女のデフォルトの姿。彼女は容姿に対する関心は私と同様に携帯していないはずだ。美弥都は注文を聞き、作業に取り掛かった。

「現場へ舞い戻った死体については話していましたか?」熊田は手早くタバコに火をつけた。隣の種田の眉がわずかに引きあがる。

「私に話す必要性はありません」

「説明がつかないのです、解剖を終えた遺体が安置室を出て一人で歩いて現場へ辿り着き、火をつけて炭化したのです」熊田は興味を抱くよう会話の初めに事件の大まかな主旨を持ち出す。相手に話させる手法である。