コンテナガレージ

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仕事(フリーライター)、日常、小説、その他諸々

回帰性5-3

「雪が降っていて視界はかなり悪かったけれど、それでも誰も見ませんでしたね。見ての通りに視界をさえぎる建物もありませんし、パトカーと救急車が来るまで、前の車で待機していましたもの」

「レンタカーを借りたのは仕事のためですか?」ハンドルに手をかけた刑事がためらいがちに言った、私と妹の関係を気にかけてのことだろう、配慮には長けている、空気を読むと最近では言うらしい、いいやもう言わないのかも、今は最近ではない。

「ええ、ここら一帯の開発のデザインを任されたんです。下見で乗車時の距離感覚と運転時それに歩行時の感覚を掴むため」

「いやあ、ひどい匂いですよ」若い刑事が後部座席に乗り込んできた、口元はハンカチで覆っている。清潔に気を配る性質だとアイラは思った。「鈴木といいます、O署の刑……、あのう失礼ですけれど?」間が空いた高い声が問いかける。

「なんでしょうか?」

「大変言い出しにくくて、その非常に失礼かもしれませんが、種田のご家族ですか?」

「ええ、姉です」

「はあ!どおりで、似ている。いやあ、はい、大変、綺麗というか種田とは、ちがっ、なんといいますか」犬のような距離の詰め方だ、幾分息も荒い。

「鈴木、聴取の最中だ」前の刑事がたしなめたが、落ち着かせる口調である。決して声を荒げたりはしないのだろう、怒鳴られる経験に基づいた体言だろうか。若い頃は違っていたかもしれない。

「すいません」

「それで、鑑識の見立ては?」

 背中を丸めた鈴木は、首を肩のラインから引き上げて、姿勢を正し、手早く内ポケットの手帳を取り出して読み上げる。「遺体の背中と融けた雪からかすかに可燃性の刺激臭を認めました。署に持ち帰り次第検出にかかるそうです」アイラと目が合った鈴木が、この国特有のわずかな顔の上げ下げを見せた。

「この間、ここで見つかった人が焼けた人ですかね?」アイラの口を軽く言葉がこぼれた。

「入れ替えた、という可能性も大いにありうる」種田が同意の返答、感度は抜群。