コンテナガレージ

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エピローグ1-1

「講義中の私語は厳禁と教わりませんでしたか?」

「試験とレポートに出席日数、大学へ通う意義が見出せたら、私も大金をつぎ込み、勉学に励むわ」

「二冊目のガイドブックを僕にあえて盗ませましたね、今更言っても、どうしようということはありません。だけれども、事前に教えてくれていてもよくありません?」

「無意識にとったあなたの行動だからこそ、価値があった。最初から二つを盗み出すと、行動はかなり異なる様式を選択したでしょう?反論があるなら聞くわ」

「いいえ、そちらの思惑を尊重します」部長は言葉を切った。「地図に描かれたZ町の開発は、電力供給都市の未来像を体現した、海上風車が乱立してました。あれでは住民の日常生活は困難でしょう。あの地図は組織の実態を明かすはぐれ者……」

「言葉が過ぎると首を撥ねられますよ」

「刀の時代はとっくに過ぎたのに、たとえ言葉が残っているはとても不思議です。それぐらい印象の残る場面だったのかもしれない」

「常識はその都度絶え間なく形を変えなくては常識とは言えない。人が作りしものに、常体などという枠をはめるべきではないのです」

「警察は一向に変わりませんがね」

既得権益が莫大だからでしょう」

「どこも格差社会ですね」

「どなたが作成したか、調べてくれない?」

「正式な依頼と受け止めても?」

「同じ言葉を二度も言わない。音声に頼ってばかりだから、処理が遅れる」

「耳が痛い。犯人は誰なんでしょうね」

「さあ、口にすれば真実になってしまう、たとえそれが事実に反した現実であってもね」

「寒気がしてきますね、ここ。ドアの近くは冷えます。かといって窓際は暑すぎる」

「しばらく、時間を空けます」

「本業に戻るので?」

「あらっ、知っているの私の仕事を?」

「ルーティンがもっとも人を欺いてくれますから」