コンテナガレージ

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パート3-6

 リビングのカレンダーに目が留まる。日付に丸印。明日が死角を取り戻す日。右目を開放する日。左目の僕はこれでお別れだ。今日中に、考えを書きとめてあげよう。彼らが親切に取り計らってくれたからではない。自分のため。証拠を残すためだ。こればかりは、自分の中で薄れてしまう。外部の端末それも厳重に取り扱う彼らに任せる。

 三十分で文書は完成した。データを送る。ディスクとネット上にも保存。メモリーカードにも予備にコピーする。ラップトップの電源を落として、データを初期化した。デスクの電話が単調な連続音でボタンを光らせる。電話を取る。

「大変貴重な資料をお送りいただいて、感謝のしようもありません」

「では感謝せずに、そのまま電話を切ってください」

「ジョークがお上手ですね。いやあ、明日にでも資料の作成を促す連絡をしようと思っていた矢先だったので、驚きました。もしかして、こちらの状況は見えていたりして、ははは、私も冗談が過ぎましたね」

「裏の家はもう売り払っていただいて結構です」

「住人はご両親が不在の時の保護者の役割ですよ?」

「ええ、知っています。ただ、法律上は七歳までの小児の場合です、僕は制限に引っ掛からない」

「こちらの国はかなり物騒です」

「あなた方が言えた言葉でしょうか?」」

「痛いことをおっしゃる」

「もうよろしいですか、そろそろ帰らないと」

「あなたにはもう会えないのですね?」

「おそらくは、……ただ、初めての試みなので、確実とは言い切れません。もう切ります」