コンテナガレージ

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パート4-3

 病院の入院着、水色の袖が目に飛び込む。これだっていつ着たのか、着させられたのかさえ皆目見当がつかない。目の前にはクローゼット、手をかける、引きあけた。違う、私の服じゃない。私は紺色のニットなんて持っていないし、プレゼントで貰ったとしても多分病院へは着てこないはずなの、……家では着られるけれど。混濁。頭を掻く。ん?指に腹に抜ける髪が短い……。振り返って、ベッド脇のドレッサーを開く。扉の内側の鏡を凝視した。沈黙。鼓動が急停止から加速。眉で切りそろえた前髪、耳に見かかるサイドの髪。明らかに私の記憶とは隔たりがある。叫んでいたらしい、看護師が駆けつけた、私を抱きかかえる、取り乱しているのが自分でも理解できているのに、監視カメラの映像で見えてもいるんだ。彼らは仕事で仕えているに過ぎない、信念が他者の救いによる発起でも、現在はそれらから得られる収入を計算に入れて生活のため、生きる糧なのだ。視界が消えてしまう。寝かされて、天井、右半分が消えるの。ああ、どうして、そっちが私なのに。月が欠けても、嘆かないのはどうして?誰かが問いかけてくる。知らない、そんなこと。月はまた満ちるからだ。どうでもいい、出て行って。ああ、そうするよ、でも、君は夜の空に上って、動いているように見せかけて、心情を反映して、願いを込められて、夜道に見上げられて、レンズ越しに表面を見つめられるさ。右側の喪失に合わせて、私は目を閉じた。だって、言ったじゃない、また満ちるって。だから、閉じたのよ、約束ね。私が言ったんだから、ああ、大丈夫だよ、言い聞かせただけだもの……。