コンテナガレージ

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パート1(3)-4

「商品や情報は家には持ち込めません」

「ご自宅の裏庭に建つログハウスをご存知でしょう、そちらをご提供します。老人を一人、体裁のために住まわせ、表向きは別荘を訪れる住人という印象を近所に振りまきます。出入りは、物置の裏、芝生に地下へ通じる通路を作りましたので、そこを通ってお入りください」僕の視線を捉えてくれて、信号待ちの監視は場所を移動した。

「わかりました」

「最後に」男性はつけ加える。「具体的なデータの提出期日を教えていただくことは可能でしょうか?」

「それは行過ぎた制限です。手綱は緩めて持つのがポイント、あなたの引きは強すぎる」

「申し訳ありません。ただですね……」僕は受話器を置いた。背後に気配を感じたためである。端末を持ち合わせていない、年配の女性がにこやかに会釈、場所を譲った。それは町で偶然、知り合いにそれも会いたい人に会えた感覚に似ていた。

 自宅まで緩やかな起伏の坂を上ったり下りたり。左側の死角が僕に何をもたらしただろうか。マイナス面が浮き彫りになった、好意的な人に映る僕のレンズは周囲の人の豹変振りばかりを流す。これまで密接に関わりを持った人物たちのイメージが脆くも崩れたではないか。良い所ばかりを見すぎていたとも思えるが、手のひら返しは、それが本性なのだろう。手首の水色のゴムは一周しても同じ色。

 自宅前。路上駐車の車、内部の機構に無頓着でも操作できてしまう移動手段に外見の格好よさとブランドの名声。やっぱり、外見が入り口には重要らしい。

 帰宅を告げる玄関にまで、甲高い声が反響している。