コンテナガレージ

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パート3(6)-2

 その日は円満な家庭が維持されて、翌日。父は週末でも仕事。ならば平日に休みが取れているかといえば、そうではなく、忙しいためかもしくは父が積極的に休日返上で仕事をしているらしいのだ、晩酌後の母が前に漏らしていた。

 家を空けて、父が通常の八時に家を出る。僕も休みだからといって正午まで眠れる体質ではなく、宿題の最後の問いを残し、ページを広げて、死角のデータをさらっていた。昨日の行動を三倍速で流す。すると、改札口や出入り口にある共通性を見出せてしまえた。母親が出かけるらしく、一階から呼ばれる。

「緊急の呼び出し、仕事の打ち合わせなの」外出禁止に念を押して母は出かけた。家には外部から室内の私の居場所を観察するカメラが取り付けられている。インテリアと取り繕った僕への説明はお見通し。ただ、装置はリビングだけなので、僕は母が出てからの行動を装う。まずは、自室に戻り、昨日の死角の続きをさらう。

 利き手のぎこちなさが目立っていた。ドアや手すり、取っ手、物を掴むのは左手を使う機会が多く、死角によって左手は対象物へ距離感に敏捷性が失われている。握力や力を必要としない行動または、左側が優位に働く位置では、左手が優位性保つようだ。軸足が左という事例に関連するのだろうか、動作を支える、次の行動、足の運び、予備動作はすべて左が担っているのか。

 昨日の夕食後、団欒の時間に縄跳びの練習が始まった、と両親には伝えていた。僕はリビングでお茶を一杯のみ、縄跳び、縄跳び、と音声を拾わせて裏の倉庫に移った。ここからが時間の勝負。ポケットに隠した縄跳びと、予備の縄跳びを倉庫、タイヤの裏に隠して、芝生を探り、うっすら土をかぶる真新しい取っ手を引き、コの字に突き出す奇抜な黄色の階段を下りた。

 下に着くと道は一本まっすぐに続き、明かりも確保されている。数メートル進んで行き止まり、そこから垂直に出っ張りを上ると、裏の家、ログハウス風の家の内部に出た。

 暖炉が陣取る部屋、木製の家具が目立つ。床にペルシャ絨毯のような模様の絨毯が敷かれている。優雅に小さなカップを口に運ぶ老人がこちらを柔らかい表情で眺める。僕は入り口、ちょうど外と通じるドア近辺に立つ。地下への扉を閉めて、挨拶を交わした。しかし、老人は空間の共有を拒絶するようにカップを置き、僕と一定の距離をとって渋い赤茶色の扉に手をかける。死角を補うべく、僕は、左足を軸に老人を追った。彼の左手に隠された、短い金属製の棒が左肩と先を抱えた手のひらから見えしまう、使い道はあえて聞かないでおく。隠しているのだから、本来の用途では使用しないのだろう。