コンテナガレージ

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仕事(フリーライター)、日常、小説、その他諸々

パート4(8)-1

 衝突回避機能が搭載された車の後部座席、右側に乗り込んで病院を目指した。母の車である。父は遅れてくるらしい。休む必要性はない、という言葉を父に投げ掛けてみた、もちろん脳内での話である。結果は、当然のごとく、この世の終わりのような悲壮感をにじませたので、発言は控えることに決めて、今日に至る。

 高速をおりた車は、住宅街の急斜面を下って、現在は交通量の多い国道を西に走行。母はあまりナビに頼らない、目的地までの道のりを記憶と地図で目指すタイプで、何度も通った経験も踏まえて、ナビはただ現在位置、方角、時間、気温と天気を表示するのみにとどまる。

 今日で眼帯のむずがゆさとも僕はお別れ。右折レーンで信号を待つ。今朝の静かな母が妙に目立って仕方がない。はたして、生存を勝ち取れるだろうか、と僕は思う。生存?元来ひとつだったのが、分かれたのだ。問題はない。恐怖にさいなまれるのは、昔の感覚を忘れたために渦巻く、それは人気のない田舎で助けを呼ぶようなものであって、おそらくは無意味な想像。じっと行動から離れ、冷静さを取り戻そうと、僕は目に見えた現象を声に出さずに呟いた。

 急加速、運転が荒い。トルクと横力が一度に体感される、体が左へ流れた。今度は南へ進路をとる。変則的に盛り上がった高架橋を上り下り、二股を左へ曲がる。一つ目の角をさらに左折。そろそろ目的地周辺である。

「体調に問題はないわよね?」母がきいた。彼女はいつも疑問形、押し付ける形は圧迫を呼び起こすなどとは、考えもしなかったのだろう。僕は、端的に応える。区役所の信号をまた左折、そして一本目を右に入ると左右が目的地。頭の名称が若干異なるが病院名はすべて同一であった。診察とはニュアンスが異なるので、どの建物に入るのか、僕は知らされていない。

 しかし、あっさりと、通い慣れた左手、直径の大きなロータリーが玄関口に張り出す建物に車は滑り込んだ。恭しく、お出迎えが数人いた。歩行者の通行を見計らって、地下の職員用の駐車場に車は誘導される。いつもはロータリーを回り、入り口で僕を下ろし、母は道路に出て、建物裏の駐車場に停めるのだった。地下にも停められたが、有料でしかも料金が高い。そういった無駄なサービスに母は見向きもしないので、今日は特別らしいと予測が立つ。