コンテナガレージ

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パート4(8)-4

 色の調節が私には可能となった。単色でも二色を混ぜても配分を変えても、僕は生きている。

 学校の創立記念日を利用した平日の休息の翌日に、僕は視野を取り戻した私で登校した。クラスメイトが駆けよる。

 未体験に戸惑いつつ、順応、機敏に対処。やっかみを受けないように、ほどほどで輪を解く。長居は禁物。私の割合を高める。後ろ手に隠した凶器が見えても、見えなった僕が相手を内部を判定したら、うんと心は晴れやかですっきり。またひとつ、別の視点から物事が捉えられた、と私は感謝を抱く。

 夕暮れ、空がうっすら紫色に染まる。下校は一人。あえて、人だかりを避けた。たまに片目を休ませるの、利き目を代えてあげるの。そうすると、気持ち程度は相手を私の心持ちで対処できるかもって思う。考えていたら駅に着いた。制服姿は私だけ。帽子に収まるはみ出た髪がホームでなびく。

 混雑したホーム、ディレイだ。遅れて車両が滑り込む、人が押し込まれる。私はステップに足をかけたけれど、はじかれてしまう。必死な形相に気持ちが引けた、私にはその気概は持てない。諦めた。

 閉まる扉、流れる車両を見送る。ホーム端のベンチに私と似た境遇の乗客を見つけた。視線がわずかにぶつかり、離れる。

 隣に座る。

 優雅な時間。何もしない時、いつもならば必死で状況を観察していただろう、それが僕はホームの屋根が切れた先の空をただおもむろに見上げていた。

 次の電車には乗ろうか。混ざり合っても私は僕でいられる。左右の革靴は揃って行く先を指し示していた。

 

おわり