コンテナガレージ

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蒸発米を諦めて1-1

 一月三日。

 ランチの準備に追われる。時間は必要な時ほど足りなく、不必要な時ほど有り余っている、これが定説。今日は前者に当てはまる忙しさ。

 開店と同時に絶えないお客は店外で順番待ち、良好な天候が恵み、日の光を浴びて寒さを耐え凌ぐ。自分には想像もつかない光景、店長はピザ釜を撮影する順番待ちのお客行動の意味を図りかねた。

 皿に盛り付けた竜田揚げをホールに一旦出て、プレートごとカウンターのお客に手渡される。店内はカウンター席とテーブル席、テーブル席はカウンターと奥に続く通路から一段高いフロアに設置。調度品は古めかしい細工が施されたもので、店を買い取る際に家具も一緒に譲り受けたのだ。大変に高価な品と聞かされた。ただし、値段で利用を決めたわけではない。店の雰囲気は家具と床、天井からぶら下がるシャンデリアとで構成がきっちりなされていた。ひとつの絵画に近いだろうか。完成された図柄なのだ。

店長はホールの状況にざっと目を配り確認、厨房の作業に戻る。その際に聞こえてきたのはニュースソースに独自の論理を展開するカウンターのお客の議論、話題は米の輸出入について。

 米の自由化、輸入規制の緩和に端を発し、国産の米という米は海外、特に資金力の顕著なアジアの富裕層、日本文化が浸透するアメリカ西海岸に拠点を置く日本食のチェーン店、その他ブームに乗った流行り好きが買い占めた。

 嘆かわしい、とスーツ姿の男性は力説する。店長は、議論の不足している箇所を、脳内で即座に補った。