コンテナガレージ

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蒸発米を諦めて1-2

 店長は、ここ数週間の流れをまとめる。

 わずかばかりの日本米は日本に残されたが、輸出需要が増したため、価格の上昇が国内で発生。これまでの二倍の価格に変動する事態に消費者は怒り、訴えた。年末のせわしない時節にもかかわらず起きていた騒ぎの正体がこの抗議デモ。そうは言っても、米がまったく手に入らないというのではなく、輸入米も店では売られている。品質もなんら問題は無いだろう、僕もいくつか試食した感想では、日本の物とは異なる、また、それでも食べられないほどでもなく、それは今まで慣れ親しんだ期間が長いだけのことで、米の特質、生産地や品種、気候による特徴だと捉えれば、問題なく口に運べるレベルの米であった。

 では、世間の日常に疎い僕でさえも、こういった米の問題に直面せざるをえない状況であるか、というと、首を縦に振る。それは、頻繁に米を貸してくれとお客から要望が寄せられるのだ。先ほども、二件、忙しいランチ時に電話があった。直接、店を訪れずに結果を求める手段としては最良であるが、こちらの状況を何一つ考えずにもらされる連絡は迷惑以外に言葉が見つからない。電子音がうるさく、すぐに受話器をとったが、用件だけを聞いて、「忙しい」と伝え、電話は切った。こちらの状況を考える気遣いすらない人物に、与える、かける言葉などありはしない。足を使って、時間や移動費を払って、店を訪れろといっているのではない。一方的な要求はずるいと言っているのだ。お客からの電話を想定すれば、電話を受けないという手段は取れないのだ。また、ガス漏れや水道局からの水漏れを伝える連絡かもしれないのだから。

 電話で要請された事例は、直接訊かれもする。どこで米を手に入れたのか、分けてくれる猶予はあるだろうか、仕入れ先を教えてくれ、などと店で提供する米のことばかりを尋ねるのだった。ひどい時は、注文前に思ったような回答が得られないために怒って店を出て行くお客がいた。今日も一人、ドアに怒りをぶつけて出て行った者がいた。年齢層は割合高いだろうか、あまり若い人たちは食に興味を寄せていないのかもしれない。

 年末に仕入れたお米は今週分で底をつく。現状から把握するに次回の仕入れは難しそうだ、これまでの適正な価格ではおそらく購入は望めない。何か別の代替案、手を打つ必要がある。