コンテナガレージ

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蒸発米を諦めて1-6

「だったら、対策を講じるべきだ」彼女は半ばがっかりした様子、求めた反応と違ったのだろう。あくまで彼女は店の従業員、不必要な寄り添いを避けるべきが肝要。火のないところに煙は立たないし、釜に入れないピザは焼きあがらない。

「そうですね、防犯ブザーでもぶら下げておきます!」肩を怒らせた国見は黙々とテーブルを拭き始めてしまった。これが現場を円滑に保つ最善の選択、その場しのぎの気に使った言葉などはかえって状況を悪化させる。店長は、たまねぎのスライスへ意識を戻した。変わり身の早さ。いいや、変わってなどいない、裏側をめくったのだ。力が抜けて、ほら、もう元通り。

 館山の休憩から数十分あとに国見も休憩に入り、店内は小川と店長の二人である。小川は店長がスライスしたたまねぎを炒める、焦げないように常にフライパンに接触する面を変える、黒く色が変わるまで続く単調な作業を彼女に任せた。かれこれ小川は二十分ほどその作業を行っている。

「店長、これってカレーに入れるたまねぎですよね」小川が口を開く。「明日もご飯を使うんですか?」

「いいや、小麦粉を練って釜で焼く」

「ああ、ナンにするのか。考えましたね」

「どうも」

「すいません、軽口を叩いて。怒られたばっかりでしたもんね」見えていないが、高確率で小川は舌を出しただろう。

「すいません!」同じ台詞、異なる音声と発信場所に店長は入り口、カランコロン、遅れて空気を震わせるドアベルに紛れた、一人の女性を見やった。

「申し訳ありません、準備中です」顔見知り、知り合い、業者の類ではなさそうで、しかも息を切らせた入店は厄介ごとに巻き込こむ懸念が瞬時に体内を駆け巡った。係わり合いは控えるべき。

「ご飯、こちらで、白米を提供してるって聞きましたんですけれど、まだ、食べられますか?」まだ、とは時間かそれとも米の残量を言っているのだろうか、店長にはわかりかねた。対峙した中年の女性の衣服と化粧、髪の毛と佇まいに違和感を覚えたのは若作りという印象だけではないように思うが、はっきりと要因を突き止められない。ただ、耳障りな不協和が鼓膜を刺激するみたいだ、高所に引きあがった内圧の高まりとも例えられるか……。

「昼の営業時間は終了しましたので、四時までお待ちください」店長はカウンターを出ることなく、対処に当たる。