コンテナガレージ

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蒸発米を諦めて4-7

「どうして、あの人を倉庫に誘導したんです?気が済むように配慮したにしても、人が良すぎます」

「店長は、人がいいんですよね」小川が店長を擁護する。

「あんたは黙って」

「……あの人の感情の起伏が不安定であったのは、観察する必要もなく、意思疎通のやり取りが感覚で図れた。それでも感情の切り替えのスイッチやラインは不明確だった。だから、相手の要求を受け入れた安定側の状態に興味を持ったのさ」

「もしお米を隠していて、あの人が見つけたら、暴れ出さないっていう保障はありませんよ」

「じゃあ、なぜ彼は酔いつぶれて人がはけるのを待ったんだろうか?個人的な話ということは言えるだろうけれど、周囲にこちらが引き下がれない状況を作り出すには見知らぬ証人の目が効果的。彼が話を閉店まで切り出さなかったのは、正面を切って説得できると思っていたため。怒りの表現も最終的な手段だった、それほど逼迫していたと思うね」

 館山の手元、壁を洗い流すホースを伝う水は目標を捕らえずに地面に無駄に流していてた。

「リルカさん、ホース」洗浄器の掃除を終えた様子の小川が指摘、手には外したサロンが巻かれる。

「ああ、まずい、まずい」

 館山の質問を切り抜けた店長は、布で丁寧に壁、ガス台、調理台の水分をふき取る動作を無意識に任せ、来週のランチで頭を満たした。

 気候はどうだろうか。マイナスの気温は続いていたが、一日、二日は日中プラスに迫る気温に達する。週間の天気予報を調べる必要がある。年明けで栄養は十分満たされているお客の腹には、重さは敬遠されるだろう、すると軽めで手軽、テイクアウトも視野に入れたメニューが喜ばれる。今年のテイクアウトのデータも貴重な資源だ、日々の変化を見極めるために、月曜はテイクアウトと店内での食事を兼ねると決めた。