コンテナガレージ

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予期せぬ昼食は受け入れられるか?1-1

「大豆が大ブームって知っています?」小川安佐が開口一番、頭の雪を払う仕草と挨拶を後回しに、子供が逐一出来事、発見を報告するよう、聞いてといわんばかりに興味を自分に引きつける。

 今日は月曜日。

 先週、土曜日の早い出勤時間とほぼ同時刻である。店長が一番に五分遅れて館山リルカ、そして小川はさらに五分遅れて厨房のスタッフが揃う。ホール担当の国見蘭は厨房の作業に口を出さない、すべては店長の裁量に任せる。だから、無駄に店の一体感を出そうなどと、足並みを揃える行為には決して走らない。これが国見の冷静な対応と、店長は観測し、頼もしくも思う。彼女は、厨房の二人に欠ける非情な性質を持ち合わせているために、お客への対応も変に馴れ馴れしさを押し出さない。必要最低限の提案と声がけのみ。親切はサービスではなく、プライバシーの侵害なのだ。

「白米と小麦の食べすぎで病気の発症が報告されてたね、朝のニュースはどこもその話題でひっきりなし、昨日からじゃない報道が過熱したのは」あくびをこらえる館山は着替えを済ませて、手を洗っている。

「だから、急いで出勤してきたんですよ。ライスが出せなくなって、これにまた小麦が使えなくなったりでもしたら、主力メニューのピザとかパスタとかカレーのナンとかは、全滅。ジリ貧です」

「店長の前で、安佐っ、もっと気を使え」二人は間に挟む店長の反応をそれとなく窺う。

「店長、それって大豆ですかぁ?」店長が開けた鉄製の鍋に小川が触れそうなぐらいに顔を寄せる。

「そう。主要な蛋白源はやはり主食から摂取するのが一番だと思ってね。こってりした料理はもうお客は食べ飽きている頃だし、七草粥もそろそろ始まる時節、胃を休めるのは食べないことが理に叶った方法なんだろうけど、日々のエネルギー摂取は欠かせないと思い込んでいる以上は、提供する意味があるんだろう。だったら、ライスでも小麦でもない、大豆の植物性たんぱく質に狙いをつけた」