コンテナガレージ

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予期せぬ昼食は受け入れられるか?1-2

「栄養的には、かなり多くの量が必要ですよ」

「肉と卵とあわせる」

「店長は栄養学の資格も持っているんですかぁ、詳しいですね」

「資格は短期間に特定の知識を取得するために設けられた証、情報はネットにごろごろ転がる。それに書籍でも情報は得られる」

「間近で正論を言われると結構へこみます」小川の眉が端の字を描く。

「豆腐ですか?」洗浄器の前の館山が小川の落ち込みに構うことなくきいた、彼女の顔はコンロの大鍋に向けられている。普段はほとんど姿を見ない大鍋の中身は館山の指摘どおり、昨日から水でふやかした豆である。コロンに火がついて、約一時間なので、そろそろ煮えた頃合である。

「手伝ってくれる?」

「それはもう、当然ですよ」

「じゃあ、鍋を火から下してざるにあけて」

「はい。安佐、着替えてきて手伝って。一人じゃあ無理」

「もう、仕方ありませんね。私が手を貸してあげます」

 二人が作業を行う間に、店長は肉と大豆をあわせた料理に取り掛かる。大鍋とは別に、固めにゆでた大豆がボールをかましたざるに。ラップをかけて大豆の熱で徐々に柔らかくしたものを肉を絡ませる。味をつけて蒸した豚肉表面に焼き色をつけ、一口よりも多少大きめに切り分ける。

 味はついているが、かなり薄めである。この二つでは物足りないか、根菜のジャガイモを加える。大豆を潰す館山と空いた鍋を洗う小川にジャガイモをゆでるように指示。館山が小川にジャガイモを倉庫に取りに行かせ、戻る間に中ぐらいの深さの鍋に水を張り火にかけた。ざるにじゃかいもを抱えて戻った小川は店長の隣でジャガイモの皮を剥き始める。

 段々と構想が出来上がる。豚肉、大豆、ゆでたジャガイモを強火で炒め、魚から作った調味料でほんのり風味付け。物足りない食欲旺盛なお客向けには小麦粉で作るナンを別料金で提供しようか。これならば、選択はお客にゆだねられるのだから、割安にも感じるだろう。あとは経過を観察するのみ。

 本日のランチは一品に絞る。テイクアウトと店内の飲食を同時に行うためである。まだ、従業員には伝えていない。店内での飲食は注文が従業員の行動を抑制する。その点は、入店前にナンをつけるか、否かの聞き取りで厨房に伝えれば、伝票にはテーブル番号の記載とナンの有無で事足りる。一人がテイクアウト、三人がレジと調理と料理の運搬。不可能ではないだろう。