コンテナガレージ

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予期せぬ昼食は受け入れられるか?3-4

「おはようございます。今朝、端末に不振な電話がかかってきて、いたずらだとは思うのですが、聞いてもらえますか?」国見は前起きなく話しかける。よほどきいて欲しい事柄なのだろう、端末に咄嗟に録音した所は彼女らしい。

 受け取った平たい端末を耳にあてる。「……大豆は調味料だけが許される使い方。豆の形状で口に入れてはならない。不浄。小麦粉を使え、小麦の地位は浮上。大豆は不浄、だから小麦が浮上……」音声はボイスチェンジャーで、聞き取りにくい声に変わっていた。聞かせるためなら、もっと他にやりようはあったように思うが、頭の悪い手口をあえて取り入れた、という可能性も否定はできない。

 端末を返す。国見は多少震えている、寒さのためではない。店主は、着替えを済ませた小川、館山をテーブルに座らせて、彼女らの顔を一瞥、顔を付き合わせた。向けられた表情で大よその心境を把握する。

「今日は営業を休むよ」

「私たち間違ったことをしてません。納得できない」小川が立ち上がる。事故の権利侵害に対する彼女の過剰反応は察するに過去の出来事に起因した態度の豹変。自分には存在しない、気分の高まり、店主は冷静に伸び上がって、聳え立つような小川を見上げる。店主は深く腰掛けて足を組んでいるために、目線の位置は低くなっている。

 メニューに変化を施すことにはなんら未練はない店主であった。

 見えない圧力に屈するのもまた、大いなる流れに飲まれないため、一時的に力になびいたように見せかけるのに、そういった手法の採用はあっさり小川に否定されたか……。

 どうしたものだろうか?

 彼女は賢さの意味を履き違えた、枠の中でもがいてる。正統性を説いても、納得はしないだろう、興奮はいずれ落ち着く。店主は、小川の言葉を受け、数分黙り込み微笑を浮かべていた。

「ランチの時間を一時間、遅らせて営業を始めることするよ」店主は口を開く。

「大豆で作った料理も売り出すのですか?」席に座った小川がきく。

「十一時から十二時まで僕と小川さんは店の入り口が見渡せる場所に移動、そこから店の様子を窺う。不審な動きがあれば、警察に事情を伝えて警戒を強めてもらう。鍵を無理やりこじ開けたりはしないだろうし、一応、カメラも入り口に設置するよ。あとは罠にかかるか、それとも他の方法で販売を止めにかかるか、状況次第であちら側の変更もありうる」

「捕まえられるでしょうか、それに店まで表のメニューを見に来ますかね?」