コンテナガレージ

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予期せぬ昼食は受け入れられるか?4-3

「安佐、いいから言って」

「仕方ありませんね、皆さんが言うんなら」勿体つけて小川が言う。「要約すると蹴落としたかったんですよ。一人勝ちって、あんまり印象に残らないし、見てる側も出来レースに見えてしまって、入り込めない。だけど、競争相手がいれば、どちらかを応援というには至らない。後押しです。どちらかといえば、という贔屓みたいなほうを自然と選ぶ。小麦信者は断トツの大差で大豆の負けを知らしめたかったんじゃあないでしょうかねえ」

「けれど、集計結果では、大豆のほうが売れたわよ」国見はレシートの眺めて、小川の反応を待った。

「人手が足りなかった、そういつもの開店時間だった違っていたかもですよ、その……はずです、はい」小川の勢いは収束してしまった。

「店長、私、ちょっと早めに休憩が欲しいのですが、いいですか?」館山がめずらしく休憩を申し出る。あまり休みたがらない最近の傾向からはずれる行動。店主は首を振って、どうぞと許可を与えた。それから、脅迫文と脅迫者の話題は休眠、店はディナーの仕込みに移行した。

 国見もいつもより早めに休憩に入れて、厨房内は店主と小川の二人だけになる。

 よそよそしく、話題を切り出そうと、小川の気配が伝わるが、僕は黙々と寸胴のスープに浮いた灰汁を取り除く。

「店長はお米を食べなくても、大丈夫な人ですか?」ナポリタンの残りをしゃがんで食べる小川が沈黙を嫌って話しかける。

「食べなくて禁断症状が出たことはこれまでにはないよ。もっとも、積極的に特定の料理や食材が欲しくてたまらない、そんな経験はない」

「甘い物とかはどうです、チョコレートやケーキ、スイーツ、パンケーキ、飴やアイス」

「家の冷蔵庫には食料と水にお茶のみ、お菓子や甘い物が置いていないので、必然的に食べられない状況を造っていることにはなる。食べたい欲求を抑えるためではないよ。わざわざ外に出てまで、食べたいかと問いかけてみると、案外体はそれらの食品を心底要求をしていないんだ」