コンテナガレージ

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予期せぬ昼食は受け入れられるか?5-3

 館山は業者が漏らす業界内の現状を踏まえた店主の見解を求める。しかし、答えはせずに仕込みを続けた。

 数十分後に、国見が休憩から戻る。彼女は店主の腕を引き、奥の倉庫に引っ張った。

「どうしたの?」

「……背中の傷をみてくれませんか?」

「傷?」上着を脱いだ国見の白いシャツにばっさりと斜めに刃が入っていた。幸いに、皮膚の傷は切り取り線のような、断続的な裂傷で、手を滑らせて切った程度の傷の深さ。血は固まっている。なぜ僕に見せたのか、その理由は彼女の話を聞きくまで見当もつかない、店主である。

「安佐と館山さんには内緒で、お願いします」だったら僕にも黙っているべきだと思うが、言葉にはしないでおいた。場面に合った発言とは思えなかったからだ。

 彼女は予備のシャツを隣のロッカーで着替えなおして、再び倉庫に戻ってきた。待っていてくれといわれている。

「斜向いのビル、階段を上がった二階にカフェがあるのを店長、知ってます?」

「行ったことはないけど、うん、存在は知っている」彼女の声が震えている。

「切られたのには、まったく気がつきませんでした。誰かが、誤って私にぶつかってきたんです。酔っ払っているのか、アルコールの匂いがその人からしました、あまり付き合いたくない、謝罪に曖昧に答えて、やり過ごしたんです、その時は。それから、少しして、視線を強く感じてきて、店員が言いづらそうに私にやんわり背中の傷と露出した肌を指摘して。もう、かなりの人に下着を見られました」僕には見られてもいいのだろうか、そのあたりも言葉に変換することを僕は躊躇う。彼女は顔を上げた。「数日の噂を我慢です。ただ、少し帰り道が怖くなって、その、店長、途中までで構わないのでというか、お願いがあります、一緒に帰っていだだけませんか?」

「家まで送るよ」ガッタと硬質な物質が床に落下、滑った端末が倉庫の入り口に回転して登場。

「ああっつとう、すいません、とてもいいところでしたよね、大丈夫です、すぐに消えますから」氷上で足元がおぼつかない心情を休憩から戻った小川が、左右に定まらない視線と頻繁に開閉する口とで忙しく、舌が絡まる。悲鳴とともに足音がパタパタ。

「私から誤解を解きます」

「そうしてくれると、ありがたい」