コンテナガレージ

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予期せぬ昼食は受け入れられるか?6-1

 核心を避ける小川と館山のよそよそしい遠巻きからこちらを横目で窺う態度は、精神的な圧力を感じる。しかし、感じているのは自分なのだから、視線と態度から予測を切り離せば事は足りて、体の拘束具ははずれてしまう。視線の威力は自らが強めている場合が多分にあるのか、人ごみで交錯する一瞬のコンタクトが体をすり減らしていたのだと、店主は圧迫の正体が掴めた気がした。無関係な事例が紐解くきっかけ。ポークカツを揚げる口元が自然に引きあがる。

 昼間の日差しに反発するように、午後は急激に冷え込みを迎え、それでも店外で順番にお腹を満たすべく、お客の足は絶えない。列は夕方近くから、午後九時前まで続いただろうか。ホール係の国見がドアを引きあける動作を行わなくなったのが、大体そのぐらいの時刻。料理を作る際に、営業時間までの逆算は行わない店主である。お客に迷惑、あるいは常に全力で取り組む、そういった伝統や力技とは毛色が異なる考え。オーダーをどれだけ効率よく、客席に運ぶかに考えが常に及べば、おのずと眼前の手技に意識は留まるもの。しかし、午後九時に店主が時間間隔を得られたのは、警察からの連絡を待っていたからだ。

 料理はタイミングを見計らうデザートを残し、厨房の慌しさは落ち着きを見せた。片足に体重を乗せる小川は、しゃがんで甘そうなミルクティーを洗い場の前で飲む。目が合った。やはり逸らされる。

 ピザ釜の館山は大きくため息をついていたが、外からお客に見られる位置なので、あからさまに疲労を態度に表さない。こちらが多少プロフェッショナル。だが、やはり視線が合うと、即断即決。離されて、彼女は何かしらの仕事、気持ち早く、後片付けに手をつける。

 店が終わる時間帯にお客が入店のドアベルを鳴らすのは稀、三名のお客が入店する。国見が応対するも、上体がわずかに拒否の意志を表明して後方に逸らされた。きゅっと彼女の片方の口元が引き締まる。

「三名様ですね」

「はい、こんばんは」

「テーブル席が一杯でして、カウンター席でもよろしいですか?」両親と子供の三人、親の二人が顔を見合わせる。年季の入った板の床に足を踏み入れた父親が、子供と手を繋ぐ母親の重たいうなずきを受けて、意志が統一、または意志を沿わせた。

 両親は厨房の僕に会釈、ホールへの通路に見切れた子供の立ち位置は二人の間だろう、半歩分の空間が空いている。お米の催促とは思えない、父親が倉庫に入ってまで中を隈なく探したのだから、これ以上の捜索を企てているとは正直考えにくい。というのも、子供の前で、怒声を撒き散らした横柄な態度を父親が取るとは思えなかったのだ。