コンテナガレージ

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予期せぬ昼食は受け入れられるか?6-6

 油にまみれたステンレスに光る、反射の板を洗剤で埋め尽くすと、大胆に水を流しかける。店主は、白米の重要性について、考察を重ねた。あの母親にとってはお米は生き抜くための必需品だった。何故、他の食品で代用を試みなかったのかは今でも疑問が残る彼女の行動である。植物性のたんぱく質ならば、話題で持ちきりの大豆を利用するべきではなかったのか。もちろん、学校で、生徒に見られるという懸念材料があるにしても、彼女は命を第一に掲げていた、あくまでも三回目の接触においてである。中傷を受ける覚悟を彼女がそもそも持ち合わせていかった、という可能性もある。つまり、なるべく、お米を持たせて、子供から家庭、それを作る母親に向かうベクトルを彼女も父親同様の、社会におけるポジションを意識していた、と思われる。しかし、あの子が小麦を食べられるように、体を試したのが、なりよりの事態収束に役に立った。

 壁をつたう水の膜が、はがれるように落下しつつ、集団を望んでは大勢になびく。

 頭の片隅は、明日のランチの構想を走らせる店主は、つり戸棚と冷蔵の在庫をチェック。明日に届く品物を数えて、記入する。無理を言って運でもらったパスタを多めに発注をかける。倉庫へ移動して、さらに食材を確かめる。スーパーで見かけるかごを棚の一番上から手に取り、厨房に移す品をまずは、かごに入れる。トマトのホール缶がゼロになり、二つ注文。春雨と乾物は、ほかに昆布を。小麦粉、強力粉と薄力粉をそれぞれ五つ。ケチャップも一つ注文。調味料は今週は足りると予測、店主はかごを持って、厨房の定位置に並べた。

 店内、厨房の清掃が片付いて、小川と館山はタイムカードを切っていた。

「店長、今日も残業ですか?」小川がきいた。

「いいや、今日はもう帰る」

「何か予定があるんですか?」

「帰るってことが予定にはならないの」

「上手いですね」

「丸め込まれて、どうする」

「だったら、先輩が、どーんとずバーンといってやってくくださいよ」

「わかったわよ」館山は咳払い。「あの、店長、店内での恋愛は禁止と面接で言われたことを覚えてますか?」

「ああ、言ったね」サロンをほどいて、払うように体の前面で風を切って皺を伸ばす。縦にたたみ、横に折って、腰紐でぐるっと小さく巻き上げた。

「単刀直入に言いますよ。国見さんと、お付き合いされているんでしょうか?」