コンテナガレージ

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抑え方と取られ方 4-4

 おいしさが必ずしも正しさに直結するのならば、高級店で扱う最高級品・ブランド名が冠された食品ばかりを単に焼いたり蒸したり、その他基本的な調理工程だけで、味は堪能できる。創作料理や多国籍料理などは店を構える段階で負けを認めていると解釈。味の創出をメーンに掲げられないのならば、生き残りをかけて他店と味を競うよりも、名の知れた高級とされる食品を扱う店という価値に重点を置いたらいいのではと思ってしまう。

 料理の技量や経験が勝る料理人はこの界隈でも数え切れないだろう。しかし、店主は店の経営維持に借金をせず、店を開いた。特段、奇をてらった料理も高級な食材も流行を追った料理も作らない。店主の特殊性を強いてあげるとするなら、料理の試供だろう。たとえば、人気のないランチメニューは二種類のうちのもう片方の変更によって、売れ行きが異なることを調べる。そのほかにも、単品で人気だったメニューを提供しても売れ行きは伸びないことも経験した。メニューが三種類のときは、選択に時間がかかり、行列の進みが悪く売り上げも伸びなかった。そういった、データを収集、解析、精査、気候と人の出足、漏れ聞こえる噂と当日の流れを取り入れて料理を作る。これが店主のスタイル。

 三種と大豆も入れて、四種類の穀物はどれを引き抜いてもどれを使わなくなっても、おそらく売り上げは落ちるだろう。ただし、世間の流れ、白米の高騰や小麦の高騰とアレルギーの発現、大豆の需要拡大と狂信的な者たちからの嫌がらせ、とうもろこしの拡充とこれからを見込んだ将来性に、多量摂取による未知の病気などなど、ランチでの使用に大掛かりな制限が加えられている中で、どれか一つを選択、選び抜くのかが店の存続にかかわるだろう。従業員には警告と直接的な被害も出た。最少人数に離脱者は致命的なのだ。

 店主は、押し付ける六つの瞳への解答に困惑した。

「とうもろこしって、特定の人間だけにしか栄養補給の財源にならないのよ、あんたしってんの?」段差を上がって彼女が男に詰め寄る。男は、荷物をテーブル中央に寄せると荷物の奥に手に回し、灰皿を入手。おもむろにタバコに火をつけた。

「ええ、知ってますとも」男は優雅に煙をくゆらせる。「栄養素だけが物を食する理由ですかな?コンビニで売っている商品全般は過剰摂取でしょう、あなたの言う栄養面から観測するとね」

「じゃあ黙ってて。こっちは主食になりうる穀物について話し合っているの」

「もうそろそろ開店の準備に取り掛かる時間では、ねえ店長さん?」

「随分前から、準備の時間は始まっています」謙遜も悪びれることなく店主は発言する。感づかない者へ黙認は被害拡大の可能性がある。正直な申し出も必要。