コンテナガレージ

サブスク・日常・小説の情報を発信

抑え方と取られ方 4-7

「出品にはリスクが伴う。お米はその価格、小麦はアレルギー、大豆は価格とアレルギー、とうもろこしは知名度の低さ。お米は高騰によって使用を断念、小麦はお米から小麦への主食の乗り換えによる摂取量の増大が要因のアレルギー症状を誘発、同じく大豆は前者の二つに関連した第三の主要穀物としての期待に乗った同様の価値上昇と病気、さらにとうもろこしは前の三つよりはるかに摂取量が低いため、多量の食事が引き起こす症状はこの中でもっとも未知数で危険と判断。要するに、お米のバランス崩壊がまねいたかつての均衡を維持するためには、実情に沿った穀物の変更が必須となる。利益ゼロや発症のリスクを背負って定期的に穀物を世間の反応に反してでも、私はメニューにのせ、売り出します」

「お米は私から買ってくださるのかしら?」有美野が畏まったしゃべりで店主に問いかける。顔に手が添えられて、手袋ははめたままであった。

「ええ、あなたが購入された値段でも、あなたが売り主ですから、買い値にいくらかを上乗せしても私が買い取ります」

「うーん、私はお金儲けが趣味じゃないのに」

「では、ディナーのメニューに使用される小麦は?」

「アレルギーの発症度合いが決め手でしょうね。私はメディアの類を見ません。漏れ聞こえてきたら、世間では相当噂になっていると判断し、提供をあきらめます」

「店長、一体全体、何を話しているのですか?」会話に分け入って、藪の隙間に見つける主に館山が声がけ。

「ランチの話。副菜、お願いするね」

「はい、任せてくださるのは、ありがたいですけど……状況が上手く飲み込めない」

「大豆は?」小麦論者の彼女が額に角でも生えているみたい、これで外見と中身が符合する。「この場に姿を見せない、それでランチに組み込むというのは虫が良すぎませんかね?」

「ランチのメニューに各自が好む、敬愛する、あるいは所属組織の勧めに応じる取引の、半ば強制的な押し迫りは私にとっては非常に虫が良すぎると思います」店主は鏡の作用、自身の存在を消し去って彼女を見つめる。「大豆に嫌悪を抱いていましたね、打ち負かせたら、あなたは本望ではないのでしょうか?」

「そうね、勝つに決まってる。負ける姿は、ええ想像できないくらい」小さな胸を張って、虚勢。