コンテナガレージ

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抑え方と取られ方 4-9 5-1

「おはようございますぅ」天候は回復、しかし気温は低下。放射冷却。国見蘭は、通路に立つ小麦論者の彼女へ会釈、カウンターに付近の有美野に苦笑いと会釈、数歩進んでホールの灰賀へはきっちりと頭を下げた。彼を彼女は覚えているようだ。店主には、状況を直接聞かない配慮。国見は奥に足早で引っ込んだ。

 

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 開店準備。国見にこれまでの状況説明を済ませると、各自、持ち場に取り掛かる。

 三人の依頼者、つまり本日の特殊なランチ形態を生み出した張本人たちには店外へ移動を促し、ランチ終了の午後二時に集合の約束を取りつけた。三名が席に着く店内をお客が覗き、店内での飲食を催促しかねない、そのための事前の措置である。あるいは、彼らの問い掛けと詮索に応える時間を取り去りたい、といった理由もないとは言い切れない。厨房の小川安佐がインフルエンザで欠けた状況、最善の手は打っておかなければ、身に降りかかってしまった対処が後手後手に回ることは目に見えているのだ。

 副菜を任せた館山は、白米と大豆に合わせた品と小麦粉ととうもろこし粉の使用に合わせた二品を完成させた。前者は、にんじんとごぼうと大根のきんぴら、味付けは和風、テンサイ糖や砂糖の不使用で酒と出汁で甘みを引き出したようだ。また後者は、さっぱりとした味付けのサラダである。葉物野菜に柑橘系のさわやかさ。副菜に合格点を出す。

 一方、メーンの料理といえば、まだ調理の段階。国見の出勤が開店の一時間前に、もののの数分で運ばれたお米を使いご飯を炊く。大豆はどこから調達を可能にしたのか、お米に遅れること数分で到着。

 まずは時間のかかる料理から手をつける、頭ではまだメニューを思案。手の空いた国見にも基本的な指示を飛ばす。館山には小麦粉ととうもろこし粉をこねる作業を指示。小麦粉は醗酵準備に時間を要するため、先に手をつけるように言った。とうもろこし粉は、店主が記したノート、水と粉の配合比を彼女に見せる。「いいんですか?」、という彼女の表情に店主は、「館山さんがこの配合を確かめれば、それはあなたのもの。時間の短縮に自己の労力を惜しんでいたら、一緒に働けないし、だったら従業員を従える、扱う、ともに働く権利はないと思っている」、と店主は回答を述べた。

 大豆がもっとも厄介。大量の水を沸かし、茹でる作業にほとんどの時間がとられると、開店時間に間に合わない。茹で上がる時間がランチの開始時間となってしまう。