コンテナガレージ

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抑え方と取られ方 5-3

 前日に冷蔵庫へ移した解凍済みの鶏肉の量を確かめる。ネックは鶏の数量だ。鶏は白米とあわせる。白米は有美野アリサが大量の持ち込み、使用料に制限はほぼないといっていいだろう。鶏もあるにはあるが、冷凍庫でカチコチ。急激な解凍は肉を固くするため、限られた時間では対処を控えるべきだ。要するに鶏の数量にすべての個数を合わせるという方法を取るしかない。しかし、数量制限を越えた事態も考えなくてはならない。また、問題が浮上してくるのか。鶏肉の下処理に、問題の解決に挑む。

 開店まで残り四十分。考えを一旦保留。

 鶏肉を塩と酒につけてしばし休ませる。早めに茹で上げる大豆は水分をしっかり切って、直火とオーブントースターで焼き目と、芯まで火を入れる。ここで店主は水分補給、水道水をグラスに注いで一気に喉に流し込む。零下の気温に慣れた体の反応はたまに訪れる気温の上昇で知れる。今日がその日。気温は低くとも日差しによって室内は暖められているようだった。

 レンコンを取り出して皮を剥き、ゆでる。その間にトマトソースを大量に作る。館山は、とうもろこしの粉を水で溶き、焼き加減を試作している。釜近くの家庭用コンロの位置に彼女が立ち、甘い香りから作業の内容を見極めた。つまり彼女は、ピザ生地の練りは終わっていると判断。

 浅い呼吸を意識的に開放。深呼吸。胸を膨らませて、しぼむ。二度繰り返した。

 国見が役目をはたして、大豆を釜と、オーブントースターから取り出す、それのバトンを店主が受け継ぐ。三分の一をすり鉢で形を潰す、茹でたレンコンはフードプロセッサーで荒めに裁断。二つを混ぜ合わせて、片栗粉をまぶす。かなり薄めに丸いせんべい上の形をペアで作り、バットに並べた。鶏肉の枚数を正確に数え、数を合わせる。

 大豆に挟む、具材に迷う。肉を使いたいが、鶏は使えない。残るは豚肉。ハンバーグ用のひき肉を使うしかないか、決断。野菜を捜索。下段の冷蔵庫に昨日仕込んだナスの残りを見つける。これを使おう。後は、彩りを考えて緑黄野菜を見繕う。

 残り二十分を切った。しかし、ピザはまだ焼けない。お客の手に渡る間際に焼き上がるのがベスト状態。残り五分に、出足の速度を量りつつ焼くしかない。あらかじめ、オーブントースターで表面を温め、仕上げを釜で行う方がよりよいかも。店主は、時間短縮の手法を館山に伝える。

 残りの大豆は肉と野菜にしょうゆベースの味付けを施して炒める。それに、油で揚げた、大豆とレンコンではさむ。さらに一枚大葉も挟み、海苔を巻いて完成。