コンテナガレージ

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静謐なダークホース 1-2

 また、逸れたので本筋に戻る。正午からは、一時、白米の独壇場。背広のサラリーマンが多く、他のメニューにはないボリュームが好まれたらしい。そして、最後の一時間は男女年代ともにバラバラ、飛び交う注文はまちまち。

 お客の視線は時に駅前通り、開店パーティー洋服店にじっと、時には首を伸ばして、列を半身にはみ出す。

 残り十分、終了までのカウントダウン。 

 鶏肉が底をついてしまった。仕方ない、不公平ではあるが、そもそもが万全の体制ではなかったので、文句は認めないつもり。目を引くお得感を最大限活かしたメニューだったはず。

 そして、約束の二時。買いあぶれたお客に非礼を詫びて、なだめ、幕を閉じた。

 集計。

 予定時刻にレースをたきつけた張本人たちが店へ再度入店。各自が不敵な笑み、にやけ、微笑、含み笑い。

 国見蘭がレジに外での会計を入力、メニューごとに出入。灰賀は店主の許可により、煙草を吸う。三人はホールのテーブルに着席。椅子の向きは入り口に隣接するレジを目指す。

 足元のすべりを抑えるため館山がモップで埃が立たないようそっと、床の水分をふき取る。店主はカウンター席に座らずに、テーブルに腰を当てて寄りかかる格好を維持。甘いタバコのにおいが鼻に届いた。

 顔を上げた国見に一同が注目。店主へ一度同意の眼差し、そして彼女はうなずき、レシートの記載されたランチの集計を読み上げた。

「白米と鶏肉のランチは、四十五。とうもろこしの肉野菜包みは、三十二。ピザは五十一。最後に大豆は四十」

「ランチにピザがこれで加わるのね」小麦論者の彼女が声高に言い放つ。座った二人を見渡し、見下げた。

 館山がつぶやく。「意外と少ない」

「僕も思ったよ」

「皆さん"ピザ"を口にしてました」

「結果がなによりの証。今更、言いがかりなんて認めない」小ぶりな両手がミュージカルの舞台で踊る、あるいは走り回る女優らしく、大げさに恥ずかしげもなくふるまう。

「館山さん、少ないというのは、どこから導いた答え?」店主はきいた。

「この界隈では昔から、前の店でも釜は外から見えていましたし、驚くほどには思えない。外には私でていないので、お客さんの声を直接聞く機会はなかった。ただ、お客はピザ釜を指差していましたので」