コンテナガレージ

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静謐なダークホース 1-4

「ん?」首を突き出す館山は後ろの縛った髪が体の傾きにより、前面にするりと落ちる。「ドアに、あれ。なんだろう?」ホールと店主の間を切り裂き、館山がモップ片手に走りよってドアを開閉。モップと片腕、半身を店内、水分をふき取るマット上に留めて、ドアに挟まった紙を手にして吸い込まれるような冷気の流れを遮断した。彼女の目は、紙を追っている。

「手紙?」

「大豆論者っていう宛名です」館山は手を振るように店主に向けて二往復。どうやら紙ではあっても、封書のようだ。

「読み上げて?」店主は開封を促す。

「いいんですか?」

「皆さんに関する事柄しか書かれていないよ」

「では、僭越ながら」館山は咳払い、一言目を読み間違え、国見に訂正されるも、彼女はめげずに読み上げた。内容は以下のとおり。

 二度目のぶしつけな手紙をお許しください。ランチのメニューに大豆がまた登場して、いても立ってもいられなく筆を執った次第です。お店に直接私が通うことは叶いませんでしたが、人づてに耳に入れた情報はすでに行列に並んで手に入る時間帯を越えていたために、今回は諦めました。ですか、テレビからあなたの姿を拝見できただけでも、私は喜ばしい限りです。また、格別にあなたの働く姿が輝いて見えました。お世辞ではありません、私の正直な気持ちと受け取ってくだされば幸い。話によれば、四種類のランチを販売していたそうですね。大豆は大勢に好まれたことでしょう。他の穀物よりも栄養価は高く、動物性のたんぱく質を補った余りある食材です。私たちの体はほとんどが大豆によって作られてる、そういっても言い過ぎではない、そう私は常々思っております。

 また、私の話ばかりですね。ですが、あなたにお声掛けするのはやはり照れてしまいますから、遠くからお客の一人として見守ることを、そして私のような人間が大豆を愛したあなたの料理を待ち望んでいることを、多少なりとも知っていただければ、これ幸い。

 つきましては、大豆をそちらへ送りたいと思います。もし、差し支えなければ、私の実家で採れる大豆をご使用くださるでしょう。

 イエスならノーリアクションを、ノーならばアクションを起こして下さい。

 ではまた。大豆論者