コンテナガレージ

サブスク・日常・小説の情報を発信

静謐なダークホース 2-1

 東京では雪らしい。交通網は遅延の恐れ、警戒と転倒の危険を呼びかける。

 地下道を出て見上げた、交差点の大型ビジョンである。

 全国ネットのニュースともいえない情報番組。今日の運勢を省けば、詳細な予報が伝えられるのでは、手を振って明日の再会を呼びかける女性に見切りをつけ、店主はつま先を翻す。左手にリニューアルから数週間を迎えた商業店舗。気の早いガラスの越しのマネキンは、薄手のコートと明るくさわやかな色合いの洋服を身にまとう。しかし、表情はそっぽを向いて無表情。ショーウィンドウに惹かれて洋服を購入する人はどれぐらいの割合だろうか、店主は行き過ぎ、角を曲がって考察をはじめた。ラインナップの告知なしに、お客は足を運ばないと店側は考えているのか。だとするとそれは、店舗を構える側の傲慢である。人通りの多い立地を確保しているのだ、根本的に店はお客の購買を見下している。

 ハートのマークが地下道脇の店舗を埋め尽くしていた。地上でも、店によってはハートが目立つ。販売すれば売れてしまう日取り。乗せられるお客、そして無関係を決め込む、翌月の同日に同程度の支払いを命じられる受け手側。

 フードをかぶって店に入った。見知らぬ人物が二人、間を空けて店舗をじっと見つめていたからだ。顔をあわせないように、奥のロッカーへ。早朝の時間であっても、ビルが陽を遮るため日中の店内は薄暗い。正午前後から光の差す角度が変わり、程度な照度が保たれる。もっとも寒さを感じるのは秋と冬の境目。春は、まだまだ暖房の気軽な利用が許される。寒さは同程度であるが、もたらしてきた一つ前の季節が要因とされる。

 本日のランチメニューはピザ一本。平均的なランチのデータ収集はピザに関しては対応を変えている。誤差が生じにくく、また他の料理に比べて、提供時間が長い。作り置きが難しい料理はどうしても、手間と拘束時間をとられてしまう。これでは、公平さに欠ける。

 しかし、ピザの単品提供に胡坐をかいているわけではない。お客一人が求める数量をカウント、一月、四回分の集計から平均値を割り出している。もちろん、僅かな誤差を含めて。この数値は、潜在的な利用客数の計算に応用される。一人当たりの平均個数と購買数を掛けるという単純な計算で導いた数値が、この界隈、ランチの時間帯に屋外で食事を求めるお客の数だ。出歩き、決められた食事時間を持たないお客も含むので潜在的と言ったのである。現に、店内で提供するスタイルの場合は、お客の滞在時間と客席が埋まってからの待ち時間が料理の提供時間および席への案内、それから会計と限られた時間を有効利用するお客を逃してしまい、正確で潜在的なお客が数えられていない。そこで、ピザ提供の縛りを設けた曜日に、価値を見出したのだ。