コンテナガレージ

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静謐なダークホース 2-3

「楽しいですか、一人だけで?」

「二人だったことは、僕にはないよ」

「それは、……どういう意味ですか?」

「言葉どおり。解釈は小川さんに次第」

「意味深。うーん、これゴーのサインかも。だけど、しかし、ううむ。見極めが難しい」

 店主はホールに降りて、入り口の摘みを捻る。ロックがかかった。

「小川さん、ちょっとその人たちを見ていて。ずっとじゃなくていい、気がついたら、二人の立っている場所を確かめて欲しい」店主は、サムアップのサインを外に見えないよう、自分肩口を指して小川に頼んだ。

「店の前に立っている人ですよね?はい、はい。多分店長が目当てですよ」

「知ってたんだ」

「店長、いつも店に入るの早いじゃないですか、私とか先輩はよく目撃していたんです。けれど、みているだけのようですし、店長に言っても要らない心配をさせるだけだからって、黙ってました。教えるべきでしたね、今日はちょっと私でも怖いです」

「危害を加えないんでしょう?」

「チョコを配れます、今日を口実に」

接触もありうる?」

「どうでしょうかね。見ているだけで満足してくれたら、帰りますよ。いつもランチ時には姿が消えてます」

 通常出勤の三十分前に国見と館山が揃って出勤。小川が鍵を開け、表の様子を確認。やはり、近づいている、と報告。国見は見つめる二人の存在は初めて知ったらしい。無駄なことだ、店主は、後発のピザの生地をこねつつ、既に醗酵の終えた生地のガスを抜き、すぐ焼き上げるよう引き伸ばし縦長に形を整え、乾燥を防ぐために上からラップをかけた。

 一応、国見と小川は外の二人から意識をはずさないよう、そう念を押した。胸騒ぎと言うか、得体の知れない、未経験の心情に、店主は引き込まれていた。

 十一時、開店。五分前に釜に入れた一陣と、低温のオーブンで温める第二陣を入れ替え、黄土色の容器を抱える小川が容器をカウンターの角にぶつける。