コンテナガレージ

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独自追求1-2

 「どこに行って誰と何をするの?」私はテーブルの側面に仁王立ち、即刻本題に入る。

 「まあ、まあ座んなさいな。ほれ、お茶でも一杯いがかね」彼女の真っ黒な瞳は輪郭を強調したコンタクト、指先の爪はマーブルチョコみたいなカラフルな色合い。手首のバングルは生ドーナッツみたな黄色。

 私達のほかは、二つ離れた席に一人だけであとは廊下を歩いている人。閑散とした構内は新鮮だった。人気の無さは早朝の空気に似ている。

 質問に答えない杏を見つめて相手に喋らせる。主導権はこちらにあるのだと再確認が相手には必要だと感じて、黙った。

 「そんな、気難しい顔しなくっても気楽に構えていればいいんだって。なんでこう、遊びに行くだけなのに頑なかなあ」まだ、明確に答えていない。じっと見つめる。「はいはいわかりました。私が悪かったって。もう。はあ、実はね、飯島公園のお祭りに行こうかって誘われたの。はい、そうです男ですよ。私の彼氏ですよ。でね、あっちは友達を連れてきたいて言うもんだからさ、そのなんていうかバランス?を考えてさ、あんたを杏さんが誘ったわけですよう。黙っていたのは断れるからだよ。あんたの性格はもういやって言うほど知っているからね」

 「行かないよ、人混み嫌いだから。それに何を話せっていうの。黙っていられる許可はもらえないでしょう?」

 「当たり前じゃないの。あんたそんなん続けてたら、あっという間に歳をとるんだから」

 「今しかできないことなら、男と遊ぶことじゃない」では、なんでここまでやってきたんだろうとかと自問。おもむろに立ち上がって自販機でお茶を買う。一気に半分ほど飲み干した私。

 呆れた杏が頬に手をあてて言う。「あんたさ、化粧とかしたことあるの?」

 「とか?化粧以外に例えば?」

 「もう!話が進まない」

 「曖昧な表現だったから」ネクタイをなびかせた半袖ワイシャツの男性が小走りで廊下を駆け抜けていった。ベンチは硬質のガラスで外からは丸見え、でもない。上半分だけ、下は曇りガラスで透過率を下げている。私は杏の正面に座った。

 「誘う相手を間違ったかな。でも、あんたしか捉まらなくてね、しぶしぶよ」