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ゆるゆる、ホロホロ3-3

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「話が突拍過ぎて理解できない」

「それでも小説家?だからね、あなたの書いた小説とあなたが見たそれとが不釣合いなのよ。本来なら本の通りに遂行されるはずだったものが行き違いで、本と異なる事件が出来上がってしまい、あいつらはそれを小説から修正して本の通りだと主張をしたいのよ」

「過去の出版物は既に刊行されている、回収すると言っても不可能だ。もう日本中の本棚に散らばってる」

「話題性。書き直したあいまいな理由。あなたは多くを語らないし、表にも出ないわ。そうやって世間は秘匿に関心を抱く。すると事件がさらに熱を帯びて加熱、注目が集まる」

「一体何のために、そいつら事件を起こしたんだ。足取りが増えたら、捜査の手が及ぶ」

「おそらくは囮で一人が生贄にされるわ。橋が洪水で流されないように、あらかじめ人を埋めておくのと同様に、囮の犯人をあいつらが世間に投入すれば事件は解決に行き着く、真実を見失ってね。要するに、本の売り上げが欲しいのよ、金策に走るぐらいお金に困っているのかしら」

「ホテルを変える。居場所は教えなくても調べるだろうからあえて伝えないでおくよ。そのほうが楽しいだろうし」

 三神の言葉はむなしく規則的な電子音に紛れ、電話は切れた。バッテリーの残量はもうディスプレイの表示で精一杯、ピクト表示が消えた。三神は日に二度ホテルにチェックイン、さらに安全性の高いホテルに移り、一泊。朝を迎えた。

 早朝第一便の飛行機で一路東京へ飛んだ。移動中の襲撃される確率を低いと思い込まずにいられない三神は、出版社を直接訪問、受付で担当者を呼び出す。まだ出勤していないとの返答に、同じ部署の人間を誰か呼ぶようにと伝えると、数分後に受付ラウンジに一人の女性が小走りでやってくる。事情を話し連絡をつけてもらう。担当者の連絡先は、携帯に非登録であった。都合よく出勤してきた担当者を三神が見つける、すぐ横を通りかかったのだ。ありきたりな嘘をついて原稿を受け取ると東京滞在一時間で再び飛行機で北海道に帰還した三神は、三人目が襲われる場面を機内で読み返していた。小説内の三人目は時系列で言うと、今日の正午に襲われる。