コンテナガレージ

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2020-10-01から1ヶ月間の記事一覧

重いと外に引っ張られる 2-4

熊田が早々と退出した。そういえば、タバコを吸わずじまいであった。 相田はブース内でまた一人となる。しばらく、時間にして数分。今度は鈴木が姿を見せた。こっちは本当に疲れている様子で頬は少しコケた感じが見える。「おつかれ」 「ああ、どうも、お疲…

重いと外に引っ張られる 2-3

「さあて、そろそろ行くかな。じゃあ、今のうちにゆっくりと寝ておけ。どうせ直ぐに仕事が舞い込んでくるから」ポンポンと鈴木の肩を叩いて部長はそそくさと消えてしまった。 嵐のように去った部長である。寝ぼけがまだ残っている相田である。肘をついてぼん…

重いと外に引っ張られる 2-2

「部長がいないのは当たり前ですから、もう慣れました。けれど一応はこの班の長なのですから何もしなくても姿くらいは見せないと……」仕事に対して自分の考えがやけに優等生のそのものであると相田自身は思っていた。口に出し、言葉として選んでみると意外と…

重いと外に引っ張られる 2-1

銀行内を監視する映像のチェックが終わり次第、通常業務に戻れとのお達しが下り、銀行内の証拠採取の終了とともに相田も署に帰ることにした。抱えている事件もなく、現在は要するに暇である。車の運転も事件を抱えている時はずっと頭の隅から仕事が離れずに…

重いと外に引っ張られる 1-14

「なにか、わかりましたか?」彼女に雑談のための余裕はないらしい。常に仕事を絡めた発言しかないのだ。 「車に乗っていないのは確かだ」鈴木は二重玄関の引き戸を閉めて熊田のもとに駆け寄る。「この車も今日は使っていません。それに、残り五軒の家の車も…

重いと外に引っ張られる 1-13

「……」熊田はタバコを取るだけなのに嫌に手間取っている。ドアを開けて腰をかがめていた時間が長すぎた。怪しい行動は続き、ドアを閉めると車のロックもかけた。鈴木は捜査の途中で駐車された警察の車両を盗んだ事例など聞いたことがない。まして、この人気…

重いと外に引っ張られる 1-12

「……そうですか。この場に残ってたのは別のアプローチから現場と事件を確認するためです」細めた目を熊田にぶつける。解凍直後は一段と機械的な話し方である。 「事件じゃないっていうのかい?」 「いいえ。事件ですがすでに私達が接見した事象はもしかした…

重いと外に引っ張られる 1-11

「あの、ちょっと?」警官が機能停止した種田に心配の声をかけるが熊田がそれを制する。 「構うな、いつものことだ。すぐに帰ってくる」種田はたまにこうして充電が切れたように彼女の時が止まる。過剰放出によるエネルギーの消費を遮断し外部との接続を断絶…

重いと外に引っ張られる 1-10

熊田と種田がサイドミラーに映る。熊田のシビックで待機していた二人が鈴木の車に接近。 「出てこい、仕事だ」窓をこんこんと叩いて鈴木が窓を下げると熊田が低い声で言った。怒っていると初めて会った者は思うがこれが熊田の普通の状態である。 「鑑識のか…

重いと外に引っ張られる 1-9

「かなり、粘性は高いです。顔や頭、肩に付着していたとすれば歩行時に地面に落下しているはずですが、トンネル内の両側で入り口にはそれらしき痕はみあたりません」早足で奥の出口まで走り、前かがみで下を観察し、入り口の方もまじまじと地面を見ると種田…

重いと外に引っ張られる 1-8

「そっちの肩を持て。上に上げるぞ」黒い液体が薄れた箇所を持ち仰向けになった死体の肩を鈴木が腰あたりを熊田が持ち、ぐっと地面との空間を開ける。 死体の背中も体の前面同様に黒く汚れていた。覗きこんで背面からお尻を観察すると、目配せでゆっくりと死…

重いと外に引っ張られる 1-7

それから、20分後に熊田のシビックが鈴木の車の後ろに停車。熊田たちが到着するまでに車は一台もこの道を通過していない。 「お疲れ様です」駆け寄る鈴木。熊田は日差しを暑そうに遮るように額に手のひらを当てて、苦い顔をした。 「現状は?」 「おそらくは…

重いと外に引っ張られる 1-6

「……じゃあ、あなたから理由を説明してよ。私からだけでは納得しないの」彼女は四栄出版社に務める会社員で取材先から帰社する途中に立ち寄った道で死体を発見したというのだ。国道から外れたこの道を通過するのは、道沿いの住人だけだろうとはじめてこの道…

重いと外に引っ張られる 1-5

「とりあえず、我々だけでは手に負えないので応援を呼んで下さい。それと人が入れないように現場保存もお願いします」動転した警官を落ち着けるためにゆっくりと選んだ言葉で話した。警官はやっと自分の責務を思い出し、熱のこもった返事。 「わかりました」…

重いと外に引っ張られる 1-4

Z町からO市市街地に向かい車で数分、小学校を左手に道なりの右カーブから左手に進む脇道が伸びている。道の脇には生い茂った草木と所々に佇む一軒家。しばらく進むと更に二手に分かれる道。右手に曲がるとおそらくは引き返す方角に進路を取る。その右手を更…

重いと外に引っ張られる 1-3

なんでこんなことを考えているかと、タバコを吸いながらふと我に返って、魅力について連想したのだと思い返す。コーヒーが目の前に置かれる。カウンターをぐるりと回って鈴木の脇から差し出された。同時に香ばしい匂いのトーストも到着する。 「お好みで蜂蜜…