コンテナガレージ

サブスク・日常・小説の情報を発信

自作小説-アンブレラは黒く、赤く

ゆるゆる、ホロホロ8-3

「店長は、そうか車を持っているんでしたもんね。地下鉄では帰らないのかあ」 「僕はいつも地下鉄だよ」 「じゃあ、打ち合わせも終電までには切り上げるってことですよね」 「うーんどうかな。できればそうしたいけど、魚に合うパンがなければ、一から作って…

ゆるゆる、ホロホロ8-2

「今日もお疲れ様ですね。急がしや」小川は大げさにため息をつく。 「店長、今日はテイクアウトのお客さんが少なかったですね」館山は既に着替えてる。店は営業時間を過ぎ、片付けもあらかた目途がついていた。明日のメニューにあわせた食材の発注が今日の最…

ゆるゆる、ホロホロ7-4 ゆるゆる、ホロホロ8-1

「あなたの指摘で事件は防げたかもしれないとは考えなかったのですか?」 「財布を拾って交番に届けたのにこちらの情報を無償で相手に晒すのを私は好まない」 「課せられた義務でも?」 「すべてあなたがおっしゃるのは結果論です。犯人が捕まらなければ私を…

ゆるゆる、ホロホロ7-3

タバコを吸いにいくと部屋を出た部長は、そのまま姿を消してしまう。 「私たちの勘違いが招いた事件の複雑さなのでしょうか」種田がきいた。 「さあ。しかし、原稿を読み込んでいたからこそ次の犯行が予測でき、止められた。上出来だと思うがな」 「一件目と…

ゆるゆる、ホロホロ7-2

「関わっているからだ」 「管轄はS市です」 「送られた怪しい原稿を調べたのはこちらだからな。なんだ、聞きたくはないのか?」 「いえ、ぜひ」 部長は事件のあらましを簡潔に不足部分は熊田の情報を付け加えて説明を施す。まず、逮捕された女性が一連の事件…

ゆるゆる、ホロホロ7-1

明治期建造の過去の遺産は平成の時代にあっても平然と黎明な姿をさびされた町の坂に沿って日本海に正対させる。夕刻の西日が差し込むO署、追いやられた部署に熊田と種田が暇をもてあまし、帰宅時間の知らせを今か今かと鐘の音を待つ。クシャリと空のタバコ…

ゆるゆる、ホロホロ6

「結局、あんたの言った通り、おとりが警察に捕まったのか?」自宅に戻った三神はテーブルに足を乗せて都会の電灯を高層階から眺めていた。部屋は想像をはるかに超えた散らかりようであったが、半日をかけてやっとつい一時間前に落ち着いたばかりに、テレビ…

ゆるゆる、ホロホロ5-2

明日は定休日。久しぶりに、ドライブをしたくなった。目的地はどこにしようか、自宅を目的地に設定すれば、どこへ行こうと家には帰れるか。 「店長着替えるの早いですね。マジックみたい。あれは女の人が変わるのか」着替えた小川は一人で話し一人で納得。 …

ゆるゆる、ホロホロ5-1

一人がナプキンで口をぬぐう、もう一人がグラスの水を半分ほどに傾けて、さらにもう一人が立ち上がり、お会計を頼む。一人去り、また一人が立ち上がり、間を見計らって最後の一人が割りと申し訳なさそうな表情を携えて店を後にした。カラリ、カラン。食べて…

ゆるゆる、ホロホロ4-8

あんまり大きな声じゃいえないのですが、僕って結構有名な小説を書いてまして、ええ、タイトルとペンネームは言ってしまうとパニックですから。わかってください。最初に自慢話をしたかったわけではないのです、これからのストーリーには必要な情報なので。…

ゆるゆる、ホロホロ4-7

陽気な人物は運転の仕方で判別が可能。大きなクラクションの多用ならば、人が避けてくれるとまだ運転手の多くは思い上がってる。正反対、こちらが譲れば相手は引いて道を譲ってくれるのに。サバイバルの生き方とは真逆のシステムが道の規則だ。端末に夢中な…

ゆるゆる、ホロホロ4-6

見限っていたのは私のほうで彼はいつも能力を隠していた。見えないようにみつからないように取り繕ってさえいた。目立つことを恐れるふりで。本当は誰よりも多角的な視点でフクロウみたいな視野で滑らかな話し方が本来のお客の彼の素の姿。サービス精神で明…

ゆるゆる、ホロホロ4-5

犯人を追い詰める警察の、正確には管轄外の二人の刑事の姿が仕事の合間に意識にちらつく。地声よりも接客のときは声が幾分高くなってしまう、喉のケアがそろそろ必要な季節。声が高いからといって親切、丁寧とはいえないのに、大方の人間、お客はこれで満足…

ゆるゆる、ホロホロ4-4

「では、こちらの席に」小川はカウンターに三人を案内する。しかし、女性はホールの段差で立ち止まり、じっとそちらに恨めしそうな顔を向けていた。そちらが好みらしい。「お好きな場所に座って構いません」彼女の背中に店主の一押し。掃除が遅れるのは重々…

ゆるゆる、ホロホロ4-3

打って変わり、翌日の業務は事件の影響を感じさせない盛況ぶり。テイクアウトの列は、裏手に繋がる隙間にお客を誘導することで道路の占領に解決策を見出した。事件現場を示す黄色のテープは撤去されている。目標値、売り上げ個数を若干の増加にもお客は風の…

ゆるゆる、ホロホロ4-2

「すいません、この子をちょっと休ませてください」「どうぞ」席は十分に空いている。カウンターの席に少年を座らせて、種田は早速話を聞く。少年は恐怖か寒さで震えていた。国見がいち早く、タオルで少年の髪を拭く。種田にもタオルを渡した。「今日はどう…

ゆるゆる、ホロホロ4-1

店は開店を待たずに十分の繰上げを余儀なくされた。大勢押しかけたお客列が通りにはみ出し、近隣の店舗の入り口を塞いだため、仕方なく今日だけ状況に応じた。テイクアウトの会計をレジの横に据えてお客を裁く。小川安佐はレジに付きっ切り、料理は店主と館…

ゆるゆる、ホロホロ3-3

「話が突拍過ぎて理解できない」 「それでも小説家?だからね、あなたの書いた小説とあなたが見たそれとが不釣合いなのよ。本来なら本の通りに遂行されるはずだったものが行き違いで、本と異なる事件が出来上がってしまい、あいつらはそれを小説から修正して…

ゆるゆる、ホロホロ3-2

「先ほど、フロントでメッセージをお預かりしました」白い手袋で普段は絶対に使わない顔の皺と語尾が高い鼻につく声。折りたたんだ紙が手渡される。 「どうもありがとう」 頭を下げてボーイはドアを閉めた。 鍵を閉めて立ち去ったことをドアホールから確認、…

ゆるゆる、ホロホロ3-1

今日はどこに行っていたのか自分の行動の予見を問いただしても明確な理由を得られる期待は薄いだろうか。三神は警察の追跡と取引相手さらに正体不明の見えない相手に応じるため、丸一日を市内の移動に費やした。通信回線の整ったホテルの一室でPCを開き、今…

ゆるゆる、ホロホロ2-7

「犯人が違った場合の、少女の死はどう説明するのかしら。犯人は出てこないわ」「管轄先に指揮権が移行されて我々にはもうその、捜査権は失われてしまったのです。ですから、ここへ来たのも本来ならばどやされる行為でして」 長々と話が時間を飛び越えたかの…

ゆるゆる、ホロホロ2-6

「そうです。なので、早急な保護が必要なんです」「殺されているわ、みすみす見逃すはずがないもの」取り乱している自分が手に取るように感じられる。手の振るえと、足の冷たさ。考察の限りを尽くしても求める答えにはたどり着かない、これが妥当な意見。娘…

ゆるゆる、ホロホロ2-5

「いつから、どうして?」「昨日になって警察署に捜索願が提出されました。事件当日に学校が終わり、これから家に帰ると定時の連絡を入れて以来、消息を絶っています。こちらに来たのは娘さんの捜索もかねてなのです、こちらに来ている可能性も考えられます…

ゆるゆる、ホロホロ2-4

「その母親、亡くなった少女の母親ですが、あなたが娘を変な目で見ていた、そのように言っています」「それがなにか?」「あなたは自覚がおありでしたか?」「髪はただ決まった形に切るのではなく、人の輪郭に合わせた微調整が必要です。似合う髪形も人によ…

ゆるゆる、ホロホロ2-3

亡くなった子は本当に現実に存在してあなたに会いに来たの?あなたが作り出した幻なんじゃないの? ……あいまいで宙ぶらりんでも私は生きてゆける。明確な答えはこの際突き詰めたりはしない。 それは前のあなた。 ちがう、取り合わないと決めた。 殺人事件か…

ゆるゆる、ホロホロ2-2

「お花、きれいね」彼女の背中に声をかけた。中腰、前かがみ。彼女は知り合いかどうかを判別するのに、しばらく間を空けた。「知らない人とはお話してはいけません」滑らかに小さい口が動く。「お花は誰にあげたの?」「死んじゃった子」「ふーん、知ってい…

ゆるゆる、ホロホロ2-1

女の子が目に付く。小学生ぐらいの年齢。通勤時間にこれほど子供を目にする機会はわざと私に見せつけるためなんじゃないか、そんな勘ぐりが思考を支配したのは、驚きと共に残念でもあった。別れた子供を忘れていたことは事実だ。私が無理に考えない工夫を凝…

ゆるゆる、ホロホロ1-5

「他人の空似」種田が呟く。顔が引き攣っていた。薬草でも煎じて飲んだときの表情。 「私の話で事件が片付くのは、こちらにも十分メリットを感じます。何より、人通りの回復がなされないと店に流れるお客のルートが繋がりません。S駅の通りから事件現場を避…

ゆるゆる、ホロホロ1-4

「少女と駐車場の職員はお互い、その二人は目撃者により補完される。外枠を眺めるためには、枠の外に出る必要がある、それも一定の距離まで遠ざかって。見ているものは含まれている一部、全体を見渡すためには目撃者が現れたとしても現場は立体駐車場の出入…

ゆるゆる、ホロホロ1-3

「こんな時間まで捜査ですか、管轄外の方が?」二人の刑事はしっとりと汗をかいている。 「まあ、はい。お邪魔でしたか?」 「ご覧の通り、仕事はしていません」 熊田は手を広げた。「少しお時間を、よろしいでしょうか。事件についてです」テーブル席に案内…