2017-07-01から1ヶ月間の記事一覧
夏雨に見舞われた。忙しなく反復運動に勤しむ間欠窓拭(wiper)は活き活きと蛙みたい。聴取は大勢に覗かれた取調室で一夜を明かす現在も続く。人権侵害の抵触を避ける参考人へは九時間の睡眠を促し翌朝七時頃に再開するらしい、起床は六時半であるから、食事、…
「あなたは高山明弘さんですか?」「はい」 「五月二十七日S駅の地下通路において犯行を目撃しましたか?」「はい」 「事件後、あなたは繁忙を理由に出頭願いを拒否しましたが、離れられないかかりっきりの仕事をあなたは抱えていたのでしょうか?」「はい…
物音が聞こえる。階段を上がる正面奥に自動昇降箱(elevater)が出迎える、左手に構える二枚の戸(door)はひっそり佇む柳。手前の一枚は色艶と素材に勝る『応接室』金色の金属板(plate)が明らめ掲ぐ。二枚の間やや右寄りに額に入る掲示板が掛かる。奥の一室は事…
昨日駆けずり回った成果を人数に限りのある車内は会議室で報告をする。移動車両は熊田の自家用車。 「銭湯で談笑する近隣住人は不科白(extra)で、雇われたのだろう。一芝居打って現金が舞い込む。前金と後払い、風呂で長湯をすれば好く、人員募集は黙って群…
昼食(lunch)は大盛況のうちその幕を閉じた。店内は活気を通り越し血気盛、いつまで待たせるのとお客の数名が扉(door)を開け閉め牛鈴鐘(cow bell)を鳴らし。打って変わる、本分と云うべき不動、鳴きもしない。献立(menu)開発に新たな一面を加える提供(approac…
飛び出した洋食店『エザキマニン』へ引き返すも夕食帯時(dinner time)が始まった。呼びかける機会は過ぎた。食欲を無理に呼び起こす種田は手早くハヤシライスを平らげ長尺対面台(counter)に積む皿越しに念を送るが、二度目の妨害、小川という従業員の遮りに…
小川安佐はpizza(ピザ)生地の具合を一時間の休憩から戻る館山リルカに見てもらい、かろうじてお客さんに提供を許す合格点をもらった。店長はそ知らぬ顔に過言(いいすぎ)はと、それでもpizza(ピザ)生地については先輩に全権を一任するのだった。たまに確認を…
白に塗り替えた内装、自動扉(door)の一枚外側に鎧戸(shutter)、導き光床に一筋二筋陽が漏れる。倉庫を思い起こす。罪悪感と身を寄せた「明るくなければ」は、体内で最高域(peak)を迎えた。立ち上り、霧散。煙草の煙みたいだ。種田は日本正(にほんただし)の吐…
「臨時休業」を力いっぱい書き付けた印刷(copy)用紙を店内から貼り付ける。 筆pen(ペン)の踊る動きを求めて隣の文房具店へ押し合いへし合い、命からがら目的の商品を買い、四つに折り畳んだ白衣(はくい)から取り出す用紙に清算(レジ)台を断って借りる。購入…
常人の発想は疑いようもなく妥当、正当性を帯びる。頚部を胴体から切り離す手技にknife(ナイフ)の適用は短時間における作業に不適格な選択だ。切断面の歪みのない均一な面、傾斜は一撃による製品、作品と呼べる。手入れされた包丁はスムーズに肉の繊維をぺろ…
「凶器を犯人が持ち去る、行方は像録機(camara)が追いきれず途切れてしまった。目撃者は二名で地下道から見上げことの惨劇を目の当たりにした。けれど、犯人の姿は見ておらず、逃走する犯人らしき姿も覚えがなかった……。S駅で起きた事件なら私知ってますけ…
「……という幕劇(drama)みたいな映画っていうのもありですけど、最近のは高感度の無線集音器(ワイヤレスマイク)が鮮明(clear)な映像と相まって物語の本質をないがしろにしてしまってる。人間の視力と聴力を超越したがために失ったものを取戻すべきなのですよ…
被害者の遺送時期と遺送先の詳細を求める催促に、熊田は我冠せず、待ちの姿勢を貫く。捜査に手は貸すが管轄内の段取りまでを明かしてなるものかよそ者、隣家の庭を出入りするから、熊田の裡である。見つかる肩口の痕にも刃物の触(あた)りは望めもせずに留保…
「店長、この新聞も持て帰ります?」国見蘭と館山リルカは予測に準じさっさと店を出た。ぐずぐずと着替えを最後に小川安佐が精算台(レジ)に積み重なる雑誌、読み物の束に手をかけた。暴風雨、洪水警報はS市全域に発令、午後九時半を目処に店を閉めた。九時…
白に塗り替えた内装、自動扉(door)の一枚外側に鎧戸(shutter)、導き光床に一筋二筋陽が漏れる。倉庫を思い起こす。罪悪感と身を寄せた「明るくなければ」は、体内で最高域(peak)を迎えた。立ち上り、霧散。煙草の煙みたいだ。種田は日本正(にほんただし)の吐…
先週は店の二階にとって開業から今日までで最も脚光と活躍の場を与えられたろうか。二週間に一度、手抜き掃除を続けていて正解であった。月曜の昼食献立(lunch menu)は気温の低下を考慮したシチューを起用し日曜の夕刻あたりから取り掛かり終電の一本前まで…
手ごたえを感じるなどとは恐れ多い、立ち止まり居座る安住の地であってたまるか。 日本正(にほんただし)は暑さを日増しに否応なく体感する北の夏仮居(かりずま)いの一屋へ網戸を取り付けようか、思案は着替えと退室の数分内でのみ許す、昨日は配送業務を行う…
先週は店の二階にとって開業から今日までで最も脚光と活躍の場を与えられたろうか。二週間に一度、手抜き掃除を続けていて正解であった。月曜の昼食献立(lunch menu)は気温の低下を考慮したシチューを起用し日曜の夕刻あたりから取り掛かり終電の一本前まで…
「つまり、私たちと言葉を交わした二人はまったくの別人であった、これを信じろとでも?」 「お怒りは重々承知、僕だって騙された一人だよ。種田がすべてを見通せる博識ぶりは認めるけど、だれにでも見落としや失敗のひとつはあるんだから。汚点と思わないこ…
「様子を見てくるよ。やっぱり窓が気になる」おもむろに鈴木は粒の大きな雨の中へ再び出て行った。気乗りしないが、種田も小走りに駆けた。鈴木が呼び鈴(iner phone)を押す。登校時間の午前八時前後に高山秋帆(たかやまあきほ)は姿を見せてはいない、今日も…
「五月二十七日の午後十一時四十三分頃だと思います。間に合いそうもない、諦めかけて歩いてました、地下を。……確か、前に男の人が歩いていて、追い越したんです。、その人上を天井を見上げてるみたいで少し気持ち悪そうだなって、不審者が頻(よ)く出るって…
「階段へお客さんの列を誘導して、なんと雨でもお客さんを帰さない工夫を凝らしてるわけですよ」興奮気味の小川安佐は休憩を終えて真っ先にそのことを伝えたかったが、昼食(lunch)の仕込みと、館山リルカはpizza(ピザ)生地の精生(せいせい)に掛かりっきり。…
市内の中心地O駅を西へ、二区画(block)進む。傾斜の急辛(きつ)いでんぐり坂を二つ目の信号で逸れ茶色の雑居ビルを過ぎた先に着く、徒歩で約十分の距離。種田は毎日この経路(root)をO市警察署まで歩く。有形文化財に指定される近代建築の代表作が勤務先と聞…
平謝り。松本商店の専務と部長がようやく帰った、店長の気難しい態度を腹を立ててると勘違いしたみたいだった。顔を出すのは配達人のいつものお兄さんだし、部長さんはめったにというか、季節ごととか、新たに入荷した珍しい品種を隔月に一度ぐらいの割合で…
「様子を見てくるよ。やっぱり窓が気になる」おもむろに鈴木は粒の大きな雨の中へ再び出て行った。気乗りしないが、種田も小走りに駆けた。鈴木が呼び鈴(iner phone)を押す。登校時間の午前八時前後に高山秋帆(たかやまあきほ)は姿を見せてはいない、今日も…
「五月二十七日の午後十一時四十三分頃だと思います。間に合いそうもない、諦めかけて歩いてました、地下を。……確か、前に男の人が歩いていて、追い越したんです。、その人上を天井を見上げてるみたいで少し気持ち悪そうだなって、不審者が頻(よ)く出るって…
「階段へお客さんの列を誘導して、なんと雨でもお客さんを帰さない工夫を凝らしてるわけですよ」興奮気味の小川安佐は休憩を終えて真っ先にそのことを伝えたかったが、昼食(lunch)の仕込みと、館山リルカはpizza(ピザ)生地の精生(せいせい)に掛かりっきり。…
市内の中心地O駅を西へ、二区画(block)進む。傾斜の急辛(きつ)いでんぐり坂を二つ目の信号で逸れ茶色の雑居ビルを過ぎた先に着く、徒歩で約十分の距離。種田は毎日この経路(root)をO市警察署まで歩く。有形文化財に指定される近代建築の代表作が勤務先と聞…
平謝り。松本商店の専務と部長がようやく帰った、店長の気難しい態度を腹を立ててると勘違いしたみたいだった。顔を出すのは配達人のいつものお兄さんだし、部長さんはめったにというか、季節ごととか、新たに入荷した珍しい品種を隔月に一度ぐらいの割合で…
ツルムラサキの性質を見極めるべくお湯に潜らせた、frying pan(フライパン)へ水をしっかり拭き熱を加える。傍ら、芯が軟らかくなる頃合、熱湯でぐらうぐる踊るツルムラサキを今かいまやと小川安佐は合図を待つ眼差しを投げかける。 店主はチョウと呼ばれた人…