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2018-12-01から1ヶ月間の記事一覧

鯨行ケバ水濁ル 梟飛ベバ毛落ツル 1-3

「この車は電気で走る、タイヤを動かす動力はモーターだよ」「知ってる。ミニ四くにのせるよのよね」「ミニ四駆って僕ら世代のブームだと思ってしましたけど、今も流行りなんですか?」「さぁ。テレビを見ませんので」「奇遇ですね、僕もテレビはうっぱらっ…

鯨行ケバ水濁ル 梟飛ベバ毛落ツル 1-2

起こすと損だ、美弥都はナマケモノをイメージ、自堕落な方ではない。胸元のポケットから喫煙道具一式を二つ指でつまみマッチを擦った。二本目のタバコを吸い始めた頃、タクシーをこのまま待つか、回復した脚力を使いホテルに戻るか二択を思い浮かべた時だっ…

鯨行ケバ水濁ル 梟飛ベバ毛落ツル 1-1

「ホテルのお姉さん、物知りね」日井田美弥都と室田海里は、植物観察の道中、遠矢来緋に出くわす。屋外で出会った彼女は海里の鋭い観察による服装の指摘を受け、休憩時間に男鹿山に入ることを吐露。それならばと海里は図々しく同行をせがむも、遠矢は二つ返…

兎死狐悲、亦は狐死兎泣 12-2

助けられたのでしょうか。見放したのでしょうか。二人に出くわしたのでしょうか。昔聞かされた物語がこの頃よく思い出されます。どれなのですか、どれであるべきなのでしょうね、どれであったら最良なのかしら。だれにとってか、それも考慮に入れるのですよ…

兎死狐悲、亦は狐死兎泣 12-1

八月九日夜 朝にこれを書く。 ある人が私を訪ねた。「探偵をやっております、十和田と呼ばれてます。お父様のご依頼で伺いました」「なんでしょう」「これを渡してくれ。理由は聞くな」左手にぶら下がる包みを差し出された、紙袋だ、受け取る。「そうですか…

兎死狐悲、亦は狐死兎泣 11-5

二年前がことの起こり、発端である。靴紐みたいにきっかけを紐解く、自ずと模倣者あるいは犯人の思惑とやらは自由気ままに片側先端の程よい厚みと硬さ、蝋の絞りがあちらから気を利かせ手を振り姿を現す。確証はない。何しろ事件を推し量るなど私が望む本分…

兎死狐悲、亦は狐死兎泣 11-4

。「午後の四時から五時の間にチェックインをして、それから三十分から一時間ほど持ち込んだ仕事を片付けて、ああこれは雑誌のコラムを書いたの、医療関係者から見た優良病院の見分け方っていう記事ね。まだ連載続いてるの、良かったら一冊いかが、増刷を重…

兎死狐悲、亦は狐死兎泣 11-3

「あの日、同業者とのお見合いを土壇場でキャンセルしたんだった。約束は親が勝手に日取りを決めて前日に……用意周到よ。私の休みを、親の病院が勤め先だもの、知ってて当然。半年前兄さんが誕生日の記念に取ってくれたのを無下にもできない、それで宿泊を選…

兎死狐悲、亦は狐死兎泣 11-2

「質問を伺いに来た、と先ほど申し上げました。忘れていたのであれば、はい、確認のために答えましょうか?」「いちいち気に障る言い方っ」サイドテーブルが小気味よく音を立てた。まるでそうず。「過去を蒸し返す暇があるのかしら。次の襲われるのは私たち…

兎死狐悲、亦は狐死兎泣 11-1

彫刻家安部は見当たらない。ふくよか、熊の右わき腹を確かめた。彫刻は人の作り方に似ている。大きく作り、そこから不要な箇所を削る。蛙のような水かき指の腹に、細胞分裂初期の段階では見られる。 しかし、美弥都は音がぱったり途切れた石の通路を振り返る…

兎死狐悲、亦は狐死兎泣 10-2

店に入る。階段の最上段で何気なく店内を見渡す気分に襲われた。昨日との差異を取る。いつもだ、過ごした昨日の仕事場は初見に思えてしまう。子供の気分、見るもの手にするもの出会うことのあらゆる事象が新鮮で初めてに感じ取れる。それとは別に昨日と地続…

兎死狐悲、亦は狐死兎泣 10-1

滞在五日目。美弥都は普段の出勤時刻に合わせ部屋を出た。施錠を確認、窃盗に遭って困る物など携帯をしない彼女は、入室について就寝前にたどり着いた論理を実践に移した。腕に巻く腕輪型のこのホテル特有の鍵、電子錠という代物。鍵をはずす機会はシャワー…

兎死狐悲、亦は狐死兎泣 9-2

<木霊眼科・内科医院> ―診察券― 氏名:兎洞 桃涸 NO.10925 飛び跳ねた意味がつながった。けれどますます疑念が渦巻いて仕方がない。作りこんだ声で呼ばれる、診察代を支払う、来月改築工事で移る近隣のピルの住所を教えられた、笑顔だ、不具合が生…

兎死狐悲、亦は狐死兎泣 9-1

八月九日 愛車ランチアに乗り込みドライブへ繰り出す。当てもなく故郷のS市を目指す羽目になった、選ばれた過去の進路に従って車を走らせる、僕のルール。いつ決めたかは定かではない、破棄も自由だとは思うが、仕事と別れた五日目に早くも僕は今日の目的を…

兎死狐悲、亦は狐死兎泣 8-6

美弥都はベッドを降りて店に向かった。カウンター、裏返す灰皿にちぎったファックス用紙を折り重ねて火をつけた。感熱紙はじわりと黒色を熱源を離れて白を覆う。火の高さを想定して、細かくちぎる紙片がわずか数秒に消え、去る間際赤い輪郭を灰皿に残してい…

兎死狐悲、亦は狐死兎泣 8-5

休かに日井田さんと会えると知れて、正直おどろきはかくせませんでした。フロントの支配人に係員のしょう介を受け日井田さんの来訪を聞いたときはこれは運命でないのか、と軽くはなであしらわれる、そうぞうはつきます。それでもうれしいことはかくせません…

休日に限って雪かき本番

本日は、お休み。 ライター業をこなしていると、腕がパンパンで休日ぐらいは、体を休めたいのに早朝から雪かきに励んだ。 幸か不幸か、空は快晴。からりと晴れた日は、凛とした寒さでパッチリと目が覚めたほど。 雪はほとんど降っていない。除雪したのは、ブ…

兎死狐悲、亦は狐死兎泣 8-4

五枚目を手繰る。「日記の内容(彼女は目に何らかのしょう害を抱えてる)が真実だと、二年前の目げき証言は非常に疑わしい内容に一変してしまいます。視界の欠損が事実ならばドアのすき間をのぞいていた彼女の立位置とどちらの目で見ていたかによっては、はい…

兎死狐悲、亦は狐死兎泣 8-3

三枚目、文字を拾う。「天窓といろりは可動式なのでは、と思いました。意識を失いかけたときおぼろげに煙を見たんです。もうろうとした意識、混だくしていたので、確証は低く捜査の足しにもならないでしょうが、襲われ生き残った唯一の被害者の証言だと大目…

兎死狐悲、亦は狐死兎泣 8-2

昨夜美弥都は『ひかりいろり』を今一度遠矢来緋を従えて室内を調べた、係員の本分を彼女はまっとう、突発的なドアの封鎖に体を廊下と室内にまたがって遮断を防いでいた、システム管理に事情は伝達済み、警報のみを一時的に解除していた。レールを左へ滑る、…

兎死狐悲、亦は狐死兎泣 8-1

調査報告を鈴木はファックス用紙に『ひかりやかた』宛、六枚の綴りを送りつけた。搬送中に意識は回復し、病院に到着するころには会話ができるまではっきりと意識が戻り、驚くのは序の口で救急治療に取り掛かる検査の段階で鈴木の体は筋組織、血管、臓器に異…

兎死狐悲、亦は狐死兎泣 7

八月九日 (どっと目に疲労が及んだために、六、七、八日と家に篭る。今日を見越していたのかも、無意識ではあった) 今月の定期健診を受けた。内容をすぐに書き留めた、病院裏の駐車場はようやく埋まって横断がやっと途切れてくれた。 「どうぞ、次の方」 「…

兎死狐悲、亦は狐死兎泣 6-8

果実の甘さ。作業の手が止まる。赤銅色のミルを回すハンドルを伸ばした脇が心地よく程よい伸張を這わせる体勢であった。口に含む味覚のほとんどを苦味が占める、甘さはまだカップの縁に口をつけ液体が流れているときに良く見られたいがために印象を植え付け…

兎死狐悲、亦は狐死兎泣 6-7

「悔しかったら」室田は入り口に片耳を向ける顔のねじり。「そこの『週刊医療ジャーナル現場編』を読んでみたらいかがかしらね」 封書を彼女は持ち込んでいた、宛先はホテル、ここへ送られてきた郵便物である。 彼女らと入れ替わりに安部が姿を見せた。そう…

兎死狐悲、亦は狐死兎泣 6-6

「捜査が及んだホテル内をいっせいに隈なく取り掛かることはしませんでした。限られた人員が順々に『ひかりいろり』、天窓、屋根、通路、二階回廊と客室、フロントそして駐車場。鑑識は見当をつけた箇所を優先的に証拠が消えてしまうその前に採取、鑑定に回…

兎死狐悲、亦は狐死兎泣 6-5

少女の視線が美弥都の背後を捕らえる。窓。 ぐずついた天候、空模様は崩れたらしい、雨が落ちた。それらしい兆候を見過ごしていた雨雲の流れはひっそり水面下で忍び寄っていた。 極限状態に、室田祥江はの心情は晒されていたのかも、溢れるすんでんのところ…

兎死狐悲、亦は狐死兎泣 6-4

「すごーい。すごいわ。ねえ、店員さん、私が会った人であなたが一番賢い」「単なる推測でしょ。それぐらい叔母さんにだって朝飯前」「今は夕飯前。そうだ、ねえご飯、ご飯を食べたいぃ」上半身の揺れから少女の両足は交互に前へ進むバタ足の見本を示してい…

兎死狐悲、亦は狐死兎泣 6-3

飲み物の注文でも似たようなケースがある。大勢で注文する際にまとめて一人が勝手に飲料を決めてしまう、強制を敷く者に靡いてしまう者が少なくない。私はそう言った場合、あえて注文に同意を取る。一度聞いて覚えられる、ドンくさい店員をそのときは演じる…

兎死狐悲、亦は狐死兎泣 6-2

「叔母様いつになったら、夕食に連れて行ってくださるの?さっきから煙草ばかり吸って、お母様はいつも煙草を吸う人は配慮に欠けているって仰ってました。本当に嫌われますよ、今度こそ」年端も行かない小学生がいっぱしに大人に利いた口で意見する。しかし…

兎死狐悲、亦は狐死兎泣 6-1

入院を余儀なくされた鈴木の代役は来週、つまりO署特別捜査課は現場へ送り込む代わりの刑事が取得する休暇に合わす腹積もりらしい。「抱える事件が多いのです」、病院に送られる鈴木は搬送直前の救急車に乗せられる寝台の上で所属部署を庇った、うわごとで…