コンテナガレージ

サブスク・日常・小説の情報を発信

2020-09-01から1ヶ月間の記事一覧

重いと外に引っ張られる 1-2

「何か、とおっしゃいましたから当然メニュー以外のものが欲しいのだと」 「そういうわけでは、あのでも、もし、可能なら作ってもらっても……」 「かしこまりました」そう言って女性店員が入り口近くのレジのあたりでコーヒーを慎重におとしている店主に近寄…

重いと外に引っ張られる 1-1

重田さちの身辺調査の途中、彼女が勤めていた塾を訪問した鈴木は、これといって事件につながるめぼしい情報を得られずH駅近くの学習塾から出てきた。早朝、塾講師からすれば勤務は午後からそれも夕方からなのであって、午前中はほとんど生活の活動を行ってい…

摩擦係数と荷重9-5

種田は眠ってしまった。 起きた時には景色は一変して、背の低い建物ばかりの田舎道を走っていた。冷たい風が首筋の温度だけを奪っていた。 「すいません。眠ってしまいました」 「別に構わない」 「すいません」 「なんとも思っていない」 「後で私が運転を…

摩擦係数と荷重9-4

車に乗り込む前に種田は行き先を聞く。このあとの予定が明確ではないからだ。 「次はどちらへ?」シートにじっと体を預けて熊田は動かない。停止。電池が切れているのか、うんともすんとも言わない。「タバコ吸ってもいいですよ?」ピックと体が動き、こちら…

摩擦係数と荷重9-3

「おい、種田聞いているか?」ぼんやりと現実から乖離していた種田に遠くから声がかかる。 「はい」自分の声でやっと現実の世界に再登場。 「帰るぞ」 「もうですか?監視カメラの映像は?」 「生憎ですが、その時の映像は記録されていません」申し訳なさそ…

摩擦係数と荷重9-2

「いえ、そういうわけでは」 「事件はまだ終わらないような気がするな……」 「それは予測ですか、それとも勘ですか?」種田は熊田を覗くようにみる。 「さあ、なぁ。どっちでも同じだと思うけど」 「予測はデータ。あくまでも観測された機械、機器からの情報…

摩擦係数と荷重9-1

「各家庭に設置された防犯カメラの映像は保存されていますか?また、保存されているとすればどのぐらいの期間を遡って見られるでしょうか?」種田は熊田とともに、アートプロジェクトが加入するセキュリティ会社を訪ねていた。受付で事情を説明するとこぢん…

摩擦係数と荷重8-4

ロビーに集められた行員たちが座ることのないお客が待つための背もたれのない弾力性の高い椅子に座り、座れないものは立っていた。 「すいません」相田は行員の一人に尋ねる。細身のスーツをきた男性。 「はい」声は多少高い。強盗と警察の出現の非日常で上…

摩擦係数と荷重8-3

「犯人は3人だから、1つ分を分けたってことじゃないのか」相田はモニターの乗ったデスクに肘をついて言う。「それで、バッグのほかに手がかりはなにか見つかったのか?」 「いいや、まだだ。ただここから発見場所までの所要時間は高速に乗ったとしても20~…

摩擦係数と荷重8-2

「一丁は本物ですね、薬莢も現場に落ちていましたし」映像を眺めて確かめるように山崎は言った。何も言わないよりははっきりとしている事実を繰り返すだけでも会話を繋ぎ止めたいのだろうか。 「他の2つは、モデルガンでも本物だと思うだろうな、この状況で…

撮影キットを100円グッズで自作する

撮影キットを100円グッズで自作する購入した商品をブログで紹介する際、気になるのが、商品の映り具合い。光の加減や、背景に映る物をどけるなど、撮影する環境・スペースを確保しなければいけません。撮影の度に場所を確保するのは億劫なので、撮影キットを…

摩擦係数と荷重8-1

相田は銀行強盗の捜査に駆り出されていた。捜査といっても、事件の核心に迫る主要な捜査とは違い、捜査員交代の埋め合わせである。仕事は事件担当者からの指示を仰ぐ、受け身であり、担当者の判断が遅いために指示が出るまでの時間が長い。白昼堂々の強盗は…

摩擦係数と荷重7-9

「私がそう望んだからですよ」屋根田もひるまない、それどころか二人の間だけの意思疎通さえ感じる。二人に視線が交差する。 「仕事を始めて間もない頃は選んでいる余裕などなかったでしょう?」 「いいえ、最初からこのスタンスでやっています。スタッフは…

摩擦係数と荷重7-8

「よろしいのですか?」女性が目を丸くして反論を込めて問いなおす。 「仕事に焦りを感じながら作成するとどうしても歪や完成を急いでありきたりの商品にしかならない。雑誌からすれば、穴を開けられないのだろうがいくら前に仕事しているからといって相手方…