コンテナガレージ

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2019-11-01から1ヶ月間の記事一覧

がちがち、バラバラ 5-7

「いいえ。とんでも。ランチは終わってしまったのですね、確認ですけど?」「よろしければ何かおつくりしましょうか?」「なんだか催促したみたいで。迷惑ではありません?」「迷惑ならば誘いません」率直な店主の物言いに女性の眉が上がった。「気にしない…

がちがち、バラバラ 5-6

「あっつ、とはい、ええ、もちろんです」彼女は上目遣い。頬が幾分ピンクに染まる。それも対象性のなせるわざ。色黒ならば赤みと判断するのは困難だ。「仕事の合間に、こちらに買出しに来る時間は確保できますか。勝手に抜け出すのではなくは許可を得ての話…

がちがち、バラバラ 5-5

「店長は、真剣に経営を考えているのか、遊んでいるのか、私、たまにわからなくなります」国見蘭の前職は飲食店の雇われ店長を十代の若さで務めていた。全国チェーンの系列店のアルバイトで彼女は入店、しかしその店は新規に開業した商業施設のレストランフ…

がちがち、バラバラ 5-4

「かなりひねくれてますよね」「なんか言った?」「いいえ、だた、あまりにもスケールの大きな話に膨らんでないかなぁと思って……」詰め寄られ追求に屈する小川は、しどろもどろ、それでも言葉を返す。「警察に証拠をもたらす行動力、原動力はつまりは善意で…

がちがち、バラバラ 5-3

国見はレジから両替用の小銭を小口の財布にありったけ詰め込む。もどった小川は鳥にさらに焼きを加え、出来上がりの鶏肉を館山が食べやすい大きさに切り、店主が持った発泡剤のトレー、詰めたご飯の上に乗せる。副菜は酢を効かせたナスのマリネ。ご飯と鶏肉…

がちがち、バラバラ 5-2

警察の現場検証と証拠採取により封鎖された店は陸の孤島と化してしまった。手を打たなければ。店主は、ぼんやり外の様子を眺める外面を従業員には見せておいて、状況の打開を目指す手法をめぐらせた。 片方の目を開ける。外を見て、雨の有無を確認。外に出て…

がちがち、バラバラ 5-1

閑散、BGMが店内の主役に平日のランチ真っ只中において悠々と優雅にそれでいて力強く、かつ繊細に細部に響き渡る音質。店舗の契約を済ませた後にスピーカーという高価な副産物の在り処を知り、店内にプレーヤーに忘れ去られた歌姫の楽曲を初めて鳴らしたとき…

がちがち、バラバラ 4-6

「行動に示さないと意思は伝わらない。誰かが言っていた」彼女に気おされて、三神はかろうじて言葉を返した。周囲の人間にもおそらく聞こえている彼女の音声に、表立った反応は見受けられない。「あるいて」音声を切って、彼女は口の動きだけで先を促した。…

がちがち、バラバラ 4-5

「どうしても私を加担させたいようだなぁ」 彼女は舗装路に出ると足並みをそろえた。三神より頭ひとつ分小さい。「……走るわよ」彼女は一言呟く。「誰もいませんよ」「上から降りてくる」三神は言われた先を振り返ったが、子供と大人がそれぞれ二名。興奮する…

がちがち、バラバラ 4-4

大木を迂回、三神は彼女と対面する。彼女は茶色の帽子を被っていた。「帽子は目立つんじゃないのかな」感想が咄嗟に口にでる。「逆。帽子を被っている人は見たけれど、どんな人だったかは覚えていないのが一般人。安心するの、大体の判断でね。銀行強盗の仮…

がちがち、バラバラ 4-3

三神はこれまで、シリーズ物を書いたことがなかった。こういった物語を書く上ではまず、短期的な出力が必要で、読者を飽きさせないために、短いスパンの継続的な作品発表が求められる。遅れては、誰もついては来ない。来月も発行されるというだけで、読者の…

がちがち、バラバラ 4-2

「あいまいな表現だ。もっと具体的におっしゃってくれないと、返答ができません」思い当たる出来事の予兆は既に昨日に起きていた。それに数時間の異変を辿れば、おのずと答えは示される。三神は体に力を込めた。ざっと、逃走経路を確保、打撃系の体術ではな…

がちがち、バラバラ 4-1

三神は中心街を離れ、タクシーで郊外の美術館に降り立った。うっそうとした森に点在するアート作品は、見てくれる者をそっと待つかのような受身の姿勢をかたくなに守っているようで、じつは美術館へ足を運ばせた行動そのものは彫刻や作品に見るものが惹きつ…

がちがち、バラバラ 3-4

私が倒れている、口をカエルみたいに開けてだ。誰かが私を見ている視点だ。ビルの外からか?ノイズが走る。こちらも劣化した映像。少女が出てきた。私は倒れたまま。少女の口が動いている、音は聞こえない。オペラみたいな聴衆を魅了す振る舞い、両手の躍動…

がちがち、バラバラ 3-3/ミステリー小説・自作小説・大人の読み物

テレビは蒸気機関車の大移動に密着したドキュメンタリーを放映している。これが日本であれば、興味は薄れるだろう。音をゼロから一段階上げる。見慣れない景色に人種、たまに流れる翻訳の裏の外国語、人物のものの考え方。わかろうとするだけで、解像度を下…