コンテナガレージ

仕事(フリーライター)、日常、小説、その他諸々

ゆるゆる、ホロホロ3-3

「話が突拍過ぎて理解できない」 「それでも小説家?だからね、あなたの書いた小説とあなたが見たそれとが不釣合いなのよ。本来なら本の通りに遂行されるはずだったものが行き違いで、本と異なる事件が出来上がってしまい、あいつらはそれを小説から修正して…

ゆるゆる、ホロホロ3-2

「先ほど、フロントでメッセージをお預かりしました」白い手袋で普段は絶対に使わない顔の皺と語尾が高い鼻につく声。折りたたんだ紙が手渡される。 「どうもありがとう」 頭を下げてボーイはドアを閉めた。 鍵を閉めて立ち去ったことをドアホールから確認、…

ゆるゆる、ホロホロ3-1

今日はどこに行っていたのか自分の行動の予見を問いただしても明確な理由を得られる期待は薄いだろうか。三神は警察の追跡と取引相手さらに正体不明の見えない相手に応じるため、丸一日を市内の移動に費やした。通信回線の整ったホテルの一室でPCを開き、今…

ゆるゆる、ホロホロ2-7

「犯人が違った場合の、少女の死はどう説明するのかしら。犯人は出てこないわ」「管轄先に指揮権が移行されて我々にはもうその、捜査権は失われてしまったのです。ですから、ここへ来たのも本来ならばどやされる行為でして」 長々と話が時間を飛び越えたかの…

ゆるゆる、ホロホロ2-6

「そうです。なので、早急な保護が必要なんです」「殺されているわ、みすみす見逃すはずがないもの」取り乱している自分が手に取るように感じられる。手の振るえと、足の冷たさ。考察の限りを尽くしても求める答えにはたどり着かない、これが妥当な意見。娘…

ゆるゆる、ホロホロ2-5

「いつから、どうして?」「昨日になって警察署に捜索願が提出されました。事件当日に学校が終わり、これから家に帰ると定時の連絡を入れて以来、消息を絶っています。こちらに来たのは娘さんの捜索もかねてなのです、こちらに来ている可能性も考えられます…

ゆるゆる、ホロホロ2-4

「その母親、亡くなった少女の母親ですが、あなたが娘を変な目で見ていた、そのように言っています」「それがなにか?」「あなたは自覚がおありでしたか?」「髪はただ決まった形に切るのではなく、人の輪郭に合わせた微調整が必要です。似合う髪形も人によ…

ゆるゆる、ホロホロ2-3

亡くなった子は本当に現実に存在してあなたに会いに来たの?あなたが作り出した幻なんじゃないの? ……あいまいで宙ぶらりんでも私は生きてゆける。明確な答えはこの際突き詰めたりはしない。 それは前のあなた。 ちがう、取り合わないと決めた。 殺人事件か…

ゆるゆる、ホロホロ2-2

「お花、きれいね」彼女の背中に声をかけた。中腰、前かがみ。彼女は知り合いかどうかを判別するのに、しばらく間を空けた。「知らない人とはお話してはいけません」滑らかに小さい口が動く。「お花は誰にあげたの?」「死んじゃった子」「ふーん、知ってい…

ゆるゆる、ホロホロ2-1

女の子が目に付く。小学生ぐらいの年齢。通勤時間にこれほど子供を目にする機会はわざと私に見せつけるためなんじゃないか、そんな勘ぐりが思考を支配したのは、驚きと共に残念でもあった。別れた子供を忘れていたことは事実だ。私が無理に考えない工夫を凝…

ゆるゆる、ホロホロ1-5

「他人の空似」種田が呟く。顔が引き攣っていた。薬草でも煎じて飲んだときの表情。 「私の話で事件が片付くのは、こちらにも十分メリットを感じます。何より、人通りの回復がなされないと店に流れるお客のルートが繋がりません。S駅の通りから事件現場を避…

ゆるゆる、ホロホロ1-4

「少女と駐車場の職員はお互い、その二人は目撃者により補完される。外枠を眺めるためには、枠の外に出る必要がある、それも一定の距離まで遠ざかって。見ているものは含まれている一部、全体を見渡すためには目撃者が現れたとしても現場は立体駐車場の出入…

ゆるゆる、ホロホロ1-3

「こんな時間まで捜査ですか、管轄外の方が?」二人の刑事はしっとりと汗をかいている。 「まあ、はい。お邪魔でしたか?」 「ご覧の通り、仕事はしていません」 熊田は手を広げた。「少しお時間を、よろしいでしょうか。事件についてです」テーブル席に案内…

ゆるゆる、ホロホロ1-2

「うううむ」わざとらしくうなる小川の返答速度の低下に隙を見つけて、店主は冷蔵庫に移動した。小川はまだ唸ってる。冷蔵庫みたい。 今日もディナーの集客は見込めない、だったら設備を明日のために活用しない手はないだろう。今しがたぼんやり片隅に浮かん…

ゆるゆる、ホロホロ1-1

店舗裏における捜査は夕刻をもち、捜査員が緩慢な作業で引き上げ準備を行っているのを小川安佐が店主に伝えた。彼女は長めの休憩から戻るやいなや、早口で風雲急を有する事態が起こったかのような口ぶりであったが、夕方を過ぎた時間帯でもう七時を回ったた…

がちがち、バラバラ 9-3

「なぜ刑事なんて儲からない職を選んだのです。あなたならもっと別の道が開けていてもおかしくはない」質問を乗り切った高揚感で三神の口が饒舌さを増した。 「金銭の授受と職種は均等な秤さえかけてもらえない。また、好んだ職種と好まざるそれとも同様です…

がちがち、バラバラ 9-2

「また警察に尋問される。どう応えるのが正解かな?」 「ご自由にどうぞ。私たちのことを友人でも知人でも結婚式にだけ呼びつける遠い親戚でも何でも構わないわ。もちろん、ネタの提供と打ち明けても問題はないでしょうね。すべてはあなたが決めて。考えるほ…

がちがち、バラバラ 9-1

「警察が追ってくる。本当に、大丈夫なんだろうな?」三神は隣の女性に訴えた。席を立った警察が見えなくなると、隣の女性から連絡が入ったのだった。彼女は仕事上の取引相手でここまで私を送った人物でもある。美術館では危機一髪で追っ手から逃れられた。…

がちがち、バラバラ 8-6

いないか、まだ店内にいるのかもしれない。 次に発車する送迎バスの時刻をバス停で確かめ、車に引き返した。 種田は、どの出口からでも出て行けるように駐車場内をぐるぐる周回、車へ熊田は手を振った。 今度は正面の右手に停車、この角度であれば入り口はば…

がちがち、バラバラ 8-5

「開店直後には店に入ってました。何度かトイレには立ちましたけど」「座る場所は決まった席ですか?」「うーんどうだろうか、窓側には座りたいと思ってますかね。けど、いつもあいてますからね、窓側。夏ですし紫外線とか気にするのは女性が多いですし、あ…

がちがち、バラバラ 8-4

また証言とは一致しない。同日の同時刻、三神の隣の席に座っていた人物、女性にも熊田たちは話を聞いていた。ここへ来る前のことである。ちょうど種田が聞きこんでる際にこの女性が自ら名乗り出てくれたのだ、私も事件のときここにいて現場を目撃したのだと…

がちがち、バラバラ 8-3

「エザキマニンというカフェをご存知ですね、あなたが良く利用している喫茶店です」「それがなにか?」「カフェが隣接する通りで少女が亡くなった時、あなたはその店にいましたね」「死んだんですか?可哀想に」三神はキーボードから手を離し、上蓋を閉める…

がちがち、バラバラ 8-2

不毛な会話を繰り広げて熊田と種田は指定された場所へ移動した。O署からは約二時間のドライブ、運転手の熊田は珍しく高速を利用し目的地周辺で一般道へ下り、郊外のショッピングモールへ車を止めた。屋外は強い日差しにより暖かく感じたが、風が吹くと冷た…

がちがち、バラバラ 8-1

「カフェの店員の証言は、事件時に常連客が窓際の席に座っていた、とのことです」助手席の種田は抱えていた質問をぶつけた。「管轄外の捜査はもう手を引いたほうが賢明だと思います」「署に帰って電話番をしているのか?」気温が上がる車内、クーラーは停止…

がちがち、バラバラ 7-7

刑事たちの対応の迅速さに舌を巻いた。見る間に責任者が血相を変えて姿を見せ、事のあらましを刑事から聞いている。太りすぎの体に手放せないタオル、サスペンダーのやさしさに甘える張り出した腹部を抱える責任者。鑑識の捜査に早急に取り掛かるべきだ。既…

がちがち、バラバラ 7-6

「宅間さん?」「ああ、ええ。この子です」「少女と会話はされました?」熊田が写真をしまいながらきいた。「はい」「どのような?具体的に覚えてることでけっこうです」「ペンキのような塗料、赤い塗料を撒きました。SOSの文字をそこに書いて、お前は生…

がちがち、バラバラ 7-5

交代してから二時間後、夕方の気配が空を赤く染めて、明かりが乏しくなったときに、二人の刑事が尋ねてきた。ちょうど一台の車を下ろしているときで、その二人も預けた車が目的なのだろうと、宅間は思っていた。しかし、手元に駐車券の控えがない。いつも利…

がちがち、バラバラ 7-4

「ご自身の判断に従うのが最善の選択、と僕は解釈します。あなたではありませんから」突き放す言い方でも縋りたい。「夢を見ました」宅間は中腰、テーブルに両手を着く。「わかりません。私が見た場面かそれともただの創造なのか、昨日の夢に少女の姿を見て…

がちがち、バラバラ 7-3

宅間は一口目を運んで熱々のマカロニを舌で転がす。はふはふ、空気を入れて熱を冷まして喉に押し込んだ。早く食べてくれと店主は言っていたが、はたしてその要求に応えられるか心配なってきた。 取っ掛かりに苦労した宅間は、快調に食べる速度を速める。端末…

がちがち、バラバラ 7-2

「お店って、やってますか?」宅間が聞いた。頭上では鈴が鳴り終わる。短い出迎え、ドアを途中で止めているからか。がらんとした店内を窺っていると、奥から先ほど話した店員が出てくる。「すみません。今日は夜からの営業のみとなっておりまして、ああ、先…