コンテナガレージ

仕事(フリーライター)、日常、小説、その他諸々

空気には粘りがある3-1

正午を回ると雲に隠れていた太陽が顔を覗かせ、海風の冷たさを緩和する。最寄り駅のすぐ傍に海が広がる光景、しかし住民にはそれが日常で誰一人足を止めて海を眺める者はいなかった。閑散とした駅前。種田は、深夜からの労働に区切りを付けたくてしかたなか…

空気には粘りがある2-3

ほんのわずか数秒に鈴木は別の空間にいるような感覚を味わう。ここがどこで視界に映る人は誰かを認識するのにまた数秒。見上げる2つの目はじっとこちらをみていた。 「あの、大丈夫ですか?」鈴木はカウンターに右手を添えて倒れないように指先に力を込めて…

空気には粘りがある2-2

デンタル・ゼロ。 エレベーターの扉が開くと、すでにそこは会社である。社名のとおりに被害者の勤め先は歯科医院である。曲線を帯びたウッド調のカウンターから二つの小さい顔が見えている。室内にはかすかに聞こえる程度の音楽が流れていた。 「すいません…

空気には粘りがある2-1

現場からめぼしい証拠は出てこなかった。夜が明けてからも捜索は引き続き継続されていて、むしろ明るくなってからの方が仕事ははかどったぐらいである。熊田も捜索に参加し、あたりの地面を細かくチェックしていったが、何も出てこなかった。被害者の遺留品…

空気には粘りがある1-5

「斜面から落とされてこの場所へ転がってきたとは考えられませんか?」種田の視線はさわさわとうごめく得体の知れない自然を捉えている。 「ぱっと見たところ、死体には土や葉や草木の類は地面に接していた体の前面にしか付着していない。上から落ちてきたと…

空気には粘りがある1-4

「鑑識の結果次第でここから捜査の方針が決まる。まあ、見たところ自殺の線は薄いが捨てきれないでいる。その程度の見解しかいえない。だから、先入観は捨ててむやみに動くのをやめにする。時間が時間なので朝にならないと情報は集まらないだろうし、それに…

空気には粘りがある1-3

熊田は鑑識によって運ばれていく死体を見送りながら現場を注視する。よく見ると現場には血痕のあとがほんのわずかしか周囲の土や草木に付着していない。死因は解剖結果次第である。しかし、外部からの観察によってわかったこともある。全身の擦過傷に、打撲…

空気には粘りがある1-2

「二、三時間かな、詳しく調べてみないと正確な時間はわからん」ジェントルな声の響きと受け取るか地獄からの誘いの声ととるかはひとそれぞれであろう。 「そうすると、ちょうど十二時から一時ぐらいですね。誰が発見したんですか?」鈴木が手帳を開く。先に…

空気には粘りがある1-1

道道二二五号線、O市の外れ、S市とは目と鼻の先。真新しいアスファルトの境目が目立つ。ロードヒーティーグの工事が冬の到来を告げた最中に着工していたことから、道路工事費を消化して造られたと言われても文句はいえない。 急勾配の坂道、一つ目のカーブに…

ゆるゆる、ホロホロ8-3

「店長は、そうか車を持っているんでしたもんね。地下鉄では帰らないのかあ」 「僕はいつも地下鉄だよ」 「じゃあ、打ち合わせも終電までには切り上げるってことですよね」 「うーんどうかな。できればそうしたいけど、魚に合うパンがなければ、一から作って…

ゆるゆる、ホロホロ8-2

「今日もお疲れ様ですね。急がしや」小川は大げさにため息をつく。 「店長、今日はテイクアウトのお客さんが少なかったですね」館山は既に着替えてる。店は営業時間を過ぎ、片付けもあらかた目途がついていた。明日のメニューにあわせた食材の発注が今日の最…

ゆるゆる、ホロホロ7-4 ゆるゆる、ホロホロ8-1

「あなたの指摘で事件は防げたかもしれないとは考えなかったのですか?」 「財布を拾って交番に届けたのにこちらの情報を無償で相手に晒すのを私は好まない」 「課せられた義務でも?」 「すべてあなたがおっしゃるのは結果論です。犯人が捕まらなければ私を…

ゆるゆる、ホロホロ7-3

タバコを吸いにいくと部屋を出た部長は、そのまま姿を消してしまう。 「私たちの勘違いが招いた事件の複雑さなのでしょうか」種田がきいた。 「さあ。しかし、原稿を読み込んでいたからこそ次の犯行が予測でき、止められた。上出来だと思うがな」 「一件目と…

ゆるゆる、ホロホロ7-2

「関わっているからだ」 「管轄はS市です」 「送られた怪しい原稿を調べたのはこちらだからな。なんだ、聞きたくはないのか?」 「いえ、ぜひ」 部長は事件のあらましを簡潔に不足部分は熊田の情報を付け加えて説明を施す。まず、逮捕された女性が一連の事件…

ゆるゆる、ホロホロ7-1

明治期建造の過去の遺産は平成の時代にあっても平然と黎明な姿をさびされた町の坂に沿って日本海に正対させる。夕刻の西日が差し込むO署、追いやられた部署に熊田と種田が暇をもてあまし、帰宅時間の知らせを今か今かと鐘の音を待つ。クシャリと空のタバコ…

ニトリのスチールラック・スタンダードの組み立てと使用感

ニトリのスチールラック・スタンダード 2月の初めに、ニトリでスチールラックのスタンダードという商品を購入していました。プリンターやコーヒーメーカー、PCの周辺機器を納める棚が欲しいと思い、色々と検索し、ニトリのスチールラック・スタンダードに決…

ゆるゆる、ホロホロ6

「結局、あんたの言った通り、おとりが警察に捕まったのか?」自宅に戻った三神はテーブルに足を乗せて都会の電灯を高層階から眺めていた。部屋は想像をはるかに超えた散らかりようであったが、半日をかけてやっとつい一時間前に落ち着いたばかりに、テレビ…

ゆるゆる、ホロホロ5-2

明日は定休日。久しぶりに、ドライブをしたくなった。目的地はどこにしようか、自宅を目的地に設定すれば、どこへ行こうと家には帰れるか。 「店長着替えるの早いですね。マジックみたい。あれは女の人が変わるのか」着替えた小川は一人で話し一人で納得。 …

ゆるゆる、ホロホロ5-1

一人がナプキンで口をぬぐう、もう一人がグラスの水を半分ほどに傾けて、さらにもう一人が立ち上がり、お会計を頼む。一人去り、また一人が立ち上がり、間を見計らって最後の一人が割りと申し訳なさそうな表情を携えて店を後にした。カラリ、カラン。食べて…

ゆるゆる、ホロホロ4-8

あんまり大きな声じゃいえないのですが、僕って結構有名な小説を書いてまして、ええ、タイトルとペンネームは言ってしまうとパニックですから。わかってください。最初に自慢話をしたかったわけではないのです、これからのストーリーには必要な情報なので。…

ゆるゆる、ホロホロ4-7

陽気な人物は運転の仕方で判別が可能。大きなクラクションの多用ならば、人が避けてくれるとまだ運転手の多くは思い上がってる。正反対、こちらが譲れば相手は引いて道を譲ってくれるのに。サバイバルの生き方とは真逆のシステムが道の規則だ。端末に夢中な…

ゆるゆる、ホロホロ4-6

見限っていたのは私のほうで彼はいつも能力を隠していた。見えないようにみつからないように取り繕ってさえいた。目立つことを恐れるふりで。本当は誰よりも多角的な視点でフクロウみたいな視野で滑らかな話し方が本来のお客の彼の素の姿。サービス精神で明…

ゆるゆる、ホロホロ4-5

犯人を追い詰める警察の、正確には管轄外の二人の刑事の姿が仕事の合間に意識にちらつく。地声よりも接客のときは声が幾分高くなってしまう、喉のケアがそろそろ必要な季節。声が高いからといって親切、丁寧とはいえないのに、大方の人間、お客はこれで満足…

ゆるゆる、ホロホロ4-4

「では、こちらの席に」小川はカウンターに三人を案内する。しかし、女性はホールの段差で立ち止まり、じっとそちらに恨めしそうな顔を向けていた。そちらが好みらしい。「お好きな場所に座って構いません」彼女の背中に店主の一押し。掃除が遅れるのは重々…

ゆるゆる、ホロホロ4-3

打って変わり、翌日の業務は事件の影響を感じさせない盛況ぶり。テイクアウトの列は、裏手に繋がる隙間にお客を誘導することで道路の占領に解決策を見出した。事件現場を示す黄色のテープは撤去されている。目標値、売り上げ個数を若干の増加にもお客は風の…

ゆるゆる、ホロホロ4-2

「すいません、この子をちょっと休ませてください」「どうぞ」席は十分に空いている。カウンターの席に少年を座らせて、種田は早速話を聞く。少年は恐怖か寒さで震えていた。国見がいち早く、タオルで少年の髪を拭く。種田にもタオルを渡した。「今日はどう…

ゆるゆる、ホロホロ4-1

店は開店を待たずに十分の繰上げを余儀なくされた。大勢押しかけたお客列が通りにはみ出し、近隣の店舗の入り口を塞いだため、仕方なく今日だけ状況に応じた。テイクアウトの会計をレジの横に据えてお客を裁く。小川安佐はレジに付きっ切り、料理は店主と館…

ゆるゆる、ホロホロ3-3

「話が突拍過ぎて理解できない」 「それでも小説家?だからね、あなたの書いた小説とあなたが見たそれとが不釣合いなのよ。本来なら本の通りに遂行されるはずだったものが行き違いで、本と異なる事件が出来上がってしまい、あいつらはそれを小説から修正して…

ゆるゆる、ホロホロ3-2

「先ほど、フロントでメッセージをお預かりしました」白い手袋で普段は絶対に使わない顔の皺と語尾が高い鼻につく声。折りたたんだ紙が手渡される。 「どうもありがとう」 頭を下げてボーイはドアを閉めた。 鍵を閉めて立ち去ったことをドアホールから確認、…

ゆるゆる、ホロホロ3-1

今日はどこに行っていたのか自分の行動の予見を問いただしても明確な理由を得られる期待は薄いだろうか。三神は警察の追跡と取引相手さらに正体不明の見えない相手に応じるため、丸一日を市内の移動に費やした。通信回線の整ったホテルの一室でPCを開き、今…