コンテナガレージ

サブスク・日常・小説の情報を発信

2019-12-01から1ヶ月間の記事一覧

がちがち、バラバラ 6-2

だんだんと着せられていった。それを私は甘んじて受け入れ、私を殺した。あの少女はたぶん許された。赴くままに自我を押し通した。目立ちすぎたから標的にされたのでは。一瞬、「自業自得」、内なる声が奥底から届いた。流行の服を着ていた彼女は見せたい衝…

がちがち、バラバラ 6-1

通勤の地下鉄。夏でも朝でも晴れでも地下鉄の明かりは後発の路線では深部のホームに近づくにつれてその威力をまざまざと見せ付ける。運良く席に座れた。仕儀真佐子は隣にちょこんと座る制服姿の少女を盗み見た。彼女は、端末を操作、画面はパズルゲームのよ…

がちがち、バラバラ 5-20

シートに包まれた少女が担架で運ばれていく。かぎつけたカメラマンのフラッシュが頭上からたかれた。ビルの二階、落下防止用の窓のわずかな隙間からカメラと手首を差し出して撮影していた。殺された人間にならばカメラの撮影は無神経、しかし、有名人の葬式…

がちがち、バラバラ 5-19

「わかりました。ご要望にはできる限りの配慮をほどこします」 「受け入れて良いのですか?」種田は冷たい目で熊田の受け入れに文句をつける。熊田は両目を軽く閉じて肩をすくめた。警察の間ではかなりポピュラーな表現手段らしい。 「ああ」熊田は一言そう…

がちがち、バラバラ 5-18

「店の裏手は頻繁に行き来する場所ではないと思われますが、いかがでしょうか?」 店主が話す。「ほとんど行きません。ゴミは店内で補完しています」 「被害者の顔に見覚えは?」従業員は皆首を横に振る。店主は種田に見つめられてから否定した。 「所持品の…

がちがち、バラバラ 5-17

「カウンターの灰皿をお使いください」 「ありがとう」カウンター、ドアに近い席に座り、足を組んで神はおいしそうに煙を吸う。「額に銃創を見止めた。その他、外傷なし。綺麗なものんだ。服の乱れ、汚れ、破損もない。寝かされた時に接地した面が汚れている…

がちがち、バラバラ 5-16

「人それぞれで反応は違います。警察は私たちよりも見慣れているから言えることで、もしも急に人が倒れていたら驚いたり、助けようと方法を迷ったりするのが普通。近くにたまたま警察がいたとしても、気が動転して頭が回るとは思えません」気の強い館山が国…

がちがち、バラバラ 5-15

もう一人の刑事が店に入ったところで、種田はその刑事に伝えるように聴取した内容を反復した。「国見さんが外の様子を見に行き、裏手で死体を見つけた。そして、店に戻り事情を伝え、次に小川さんとあなたが、死体を発見。そしてさらに、小川さんに呼ばれた…

がちがち、バラバラ 5-14

館山に警官が付き添い、離れる足音が鳴った。 「あんたが見つけたのかい?」白髪の鑑識が問う。 「店の従業員です、見つけたのは」口元にしわを寄せて鑑識の男性が立ち上がる。意外と身長が高いとわかる。僕自身の感覚も死体を見つけて麻痺してたらしい、と…

がちがち、バラバラ 5-13

数秒間、店主を穴が開くように見つめて、館山は瞬きを数回繰り返すと本来の機敏さを取り戻し、一度壁のもたれる少女を見てから、こくりとうなずき隙間に消えた。 一分も経たない間に空間がさらに狭く感じる。制服警官が一名と鑑識の人間も一人だ。制服は警官…

がちがち、バラバラ 5-12

目に飛び込んだのは、足をテディベアのように広げ、座る女の子である。事件の子供と同年代、嫌な予感が過ぎるがもう遅い。おそらくはとうに通り越して、僕の予想と小川のそれは確定。口元を両手で覆う小川を少女が見えない位置まで下がらせる。泣いているの…

がちがち、バラバラ 5-11

「朝から具合が悪かったの?」店主はきいた。もちろん、従業員の健康管理は僕の役目である。朝には必ず顔色と吹き出物の有無、隈や声の質などをチェックする。問題はなかったように思うが、彼女の様態の変化は明らかに体調不良を見抜けなかった僕の判断ミス…

がちがち、バラバラ 5-10

「何もしないというのは、まあ、半分正解だ。ほら、ほんのすこしサイズの合わない靴を履いていると、だんだん足に馴染んでくる。靴は履くときよりも、脱ぐときに違和感が襲う。これは靴擦れを起こさない、前提で話していると先にっておこうか。小川さんから…

がちがち、バラバラ 5-9

「ほうら見てください。店長のお墨付きですよ!」 「うるさいなぁ」お客のいない店内だから許される言動、やり取り。場面での切り替えはわきまえていると店主はあえて叱らない。普段の行いが言動に表れるだろうとは考えている。しかし、手取り足取りすべてを…

がちがち、バラバラ 5-8

食事の合間に事件の話を国見が主に聞き役で二人は会話を交わしていた。平日の昼間の事件の影響は各所に被害を持たした様相。女性の美容室もキャンセルの電話が殺到したそうで、キャンセル料を支払ってでも、断るお客の対応に追われ、予定表はすっかり今日の…