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ゆるゆる、ホロホロ7-3

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 タバコを吸いにいくと部屋を出た部長は、そのまま姿を消してしまう。

「私たちの勘違いが招いた事件の複雑さなのでしょうか」種田がきいた。

「さあ。しかし、原稿を読み込んでいたからこそ次の犯行が予測でき、止められた。上出来だと思うがな」

「一件目と二件目で事件の類似点を読者ならば見出していてもおかしくはありません。原稿に頼らなくても事件と小説との関連性には辿りつきました」

「必ず?」

「ええ。世間には奇特な人がいます」種田は顎を引いた。首を回して壁の時計も見る。「目撃者の一人が小説の作者である重要な事実は管轄の警察は調べがついていたのになぜ黙っていたのでしょうか。彼から辿れば事件は二件目の前に終焉していたかもしれませんよ」

「部長がいっていたように、メディアに顔を出さない作家だから顔と本名で物書きと職業をこちらに伝えても誰も引っかからなかったんだろう。現にこっちも気がつかなかった。まあ、私はペンネームを聞いてもわからない」熊田はタバコを咥えた、種田に火はつけないとアピールする。「目撃者に疑いをかけるだけの要素はカフェの聞き込み調査の時点ではほぼないと言うべき」

「それはわたしもです。しかし、三神は不審な相手と関わりをもっています。確実に」

「疑いは罰せず。規制が厳しいと自由度が減り、より犯罪が多発する。手綱は緩めておくべきなんだ、いざというときに引いて言うことを聞かせるために」

「私は灰色でも罰します」

「自分が灰色に染まっても?」

「その覚悟がなければ、私は崩壊します」

 終業の音色。常勤の職員が続々廊下を歩く音。

「帰らないのか?」

「熊田さんは?」

「かえる」

「では、私も帰ります」

「タバコを吸ってから帰る」

「そうですか、それではお先に」

 熊田は一人うつむき気味に老朽化した署内に似合わない真新しい喫煙所に場所を変え煙を吐き出す、タバコを一本消費。空腹にかこつけて熊田は署を出て、車を走らせた。駐車場で料金を支払い、目的地まで足を進める。時間はちょうど夕食時、ドアを開け、笑顔が出迎え席に着く。皿に盛られたライスと格闘しながらも食事は文句のつけようがなかった。背後はレジとドア、腰を少し浮かせるとピザを焼く石釜が見える。店主は私に特別扱いも、手を休めて恭しくご機嫌を伺うこともない。

 居心地が良いまま、夕食を終えた。

 帰り際、立ち上がるとタイミングを合わせたように店主が厨房を出る。顔が合った。

「ごちそうさまでした」

「どうも」

「あの」背中を見せる店主に熊田は言う。「あなたは事件をどのあたりから理解していましたか?」ホールではお客のざわめき。

 短い髪の店主は振り返る。「誰がどのような理由で行動を起こした、あるいは物質や人が損害、損傷をおった、それらの解明があなたの言う理解なら私はいまだに理解及ばないでしょう」