コンテナガレージ

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2021-02-01から1ヶ月間の記事一覧

ソール、インソール プロローグ 1-1

十二月三十一日、大晦日。師走と騒いでからクリスマスが終わりやっと落ち着いた頃に年末年始の街の賑わいである。十二月だけは師走と旧暦を言いたがる。環境問題を叫ぶ人種はイルミネーションを考えもなしに綺麗だと口にしているように見える。あくまでも私…

空気の渦は回転する車輪のよう 1-5

それに、種田は自分たちの価値を平等に保障しようとする。自分にとってはどうだろうか、どれもこれも同じにしか見えないし、映らないだろう。事件の解決が警察の総意。これが満たされれるのなら他人からは犠牲と映っても着地点は普遍なのだ。一連の事件を吐…

空気の渦は回転する車輪のよう 1-4

「忙しくなればそれとなく応援要請の声が掛かるよ」肘をついて熊田はタバコを吸う。 「なんですかそのやる気のなさは、だからいつまでも管理監に言われっぱなしなんですよ!」 「俺が言わなくてもお前が言うだろう」 「お前ではなく、種田です。言いますけど…

空気の渦は回転する車輪のよう 1-3

また、行方の知れなかった警官は、美弥都の見立ての通りに殺人事件には介入していなかった。エンジンオイルをまいた事実だけを認め、殺害の犯行は否定した。トンネル内の死体は自分が見た時には死体であったと切実に懇願して無実を訴えているそうだ。加えて…

空気の渦は回転する車輪のよう 1-2

「もちろん金を盗んで山分けすることが目的ではありましたけど、思ったように世間が流されるのを見て、ああ、私が見たかったのはこれじゃないと思ったんです。同じ時と同じ時間でたまに変わった仕事で、忙しいことがステータスで誇りで、これが人としての誇…

空気の渦は回転する車輪のよう 1-1

事件は意外にもあっけなく終幕を迎えた。熊田の提案を受け入れた捜査員が全銀行員を密着してから三日目に行員の一人が不信な動きを見せた。仕事終わりの寄り道でセレクトショップにて高級時計を物色していたのだった。ターゲットをその行員に絞り込んで、さ…

水中では動きが鈍る 5-3

否定的、ネガティブに力を注いでいるとその通りになる時がある。子供は落とさないでと言われるとコップに入った飲み物をこぼしてしまう。外からの呼びかけに無意識に落とした時の映像が再生されて体が反応してしまったのである。明日についてもそうだ。面白…

水中では動きが鈍る 5-2

「でもですよ、より多くの可能性を網羅して初めて捜査方針を決定をするんです。僕達の意見も取り入れたのは二回とも捜査が行き詰ってからなのは、おかしいですよ」 「だから、俺達の主張が最初から採用されるわけがないの。座っている席がそれを物語っている…

水中では動きが鈍る 5-1

捜査の体制が一変する。打つ手がなくなった捜査本部にもたらされた熊田の進言に管理監は有無を言わず、熊田の提案を受け入れた。犯人を挙げた手柄よりも事態の消息に躍起になっている始末。午後8時32分、捜査本部には集められた人員に現時刻からの捜査の方針…

水中では動きが鈍る 4-8

「そう、殺人はそれを口外しようとしたために行われたのです。しかし、よりによって犯行のリークは一人には留まらず、二人目も口外に踏み切ろうとしたため、その前に殺害された」 「一人目の事件では身元を示す持ち物が持ち去られていました。しかし、二人目…

水中では動きが鈍る 4-7

大きな目を伏せて美弥都は面倒くさそうにこたえる。「簡単言えば銀行強盗の仲間割れ。最初の被害者が強盗犯の一人によって殺害される。次にもうひとり殺され、またひとりで、最後には一人が残る」 「待ってください。そもそも銀行強盗は二件目の事件後に発生…