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2019-07-01から1ヶ月間の記事一覧

店長はアイス 幸福の克服3-7

「事件を解決に導いたのは、たしかだ。手柄が欲しいのか?」「いえ、二件目の殺害を食い止める手段はなかったのかと思いまして」「情報の整理、人員の少なさ、可能限り最善は尽くした、落ち度があったか?」「まったくありません」「らしくないな」「……誰か…

店長はアイス 幸福の克服3-6

鈴木はまだ吸い始めの煙草を咥えて、相田は目を閉じてどちらも時計の針を止めていた。「生活には困っていません。それに、過去を調べるのは好きではない。むしろ、おもしろさは感じていない」「そうです、この人に勤まるわけがない」「あなたならすぐにでも…

店長はアイス 幸福の克服3-5

鈴木が場を支配する時間、熊田はぼんやり事件をたどる。腑に落ちない点は二人の死によって明らかにされない。生存してたとしても、いいや生存の場合はその事実にすら関与できない。日井田美弥都の頭脳が欲しい、熊田は思う。種田とはまた異なる指向性がどの…

店長はアイス 幸福の克服3-4

「お前、留守番は?」隣に流れ込んで座る鈴木に相田が冷ややかな視線。「僕にだって後輩の一人や二人いるんです。一声かければ、それはもうすっ飛んできます」得意そうな鈴木に相田はずばり指摘する。「買収したな」「なっなにを言って、バカな事を、いくら…

店長はアイス 幸福の克服3-3

「殺された、または自らで命を絶ったにしろ、その現場は異常と言える状況。何らかの意図、連続殺人の序章、世間へのメッセージ、特定の人物を対象に警告、自己顕示、快楽の意味合いも含む。死にたいのなら高所から飛び降りれば手っ取り早く、かつ確実性が高…

店長はアイス 幸福の克服3-2

「私も同行します」種田が言う。 「……、店であまり過激な言動はよしてくれよ。事件は解決したんだから」 「心得ています」 鈴木を置いて三名はO市とS市の境目、海道を逸れた海沿いの喫茶店に足を向けた。熊田の車が駐車場に納まる。黒ずんだブロック塀に三毛…

店長はアイス 幸福の克服3-1

林道、股代修斗の取り調べは上層部の手に渡り、手柄もそのまま熊田たちの手を離れた数週間後の昼下がり。熊田たちは通常の業務、つまりとてつもなく暇な状態に戻り、押し付けの仕事を待つ日々を淡々とこなした。部長の空席は、継続中。襲撃の一件からぱった…

店長はアイス 幸福の克服2-12

「えっ?」 「彼女は大嶋氏に声をかけた。以前から彼はこちらの店に通っていた、そして彼女は大嶋氏の想いに気が付いていた。ここでなぜ、紀藤香澄氏が邪魔になったのか。彼女はたんに股代氏と付き合いがあるだけ、既婚者の男性との。殺すまでの動機には発展…

店長はアイス 幸福の克服2-11

「事実?」鈴木がまた声を出す。 「まだ、私が話しますか。それとも股代さん、あなたがご自身でお話しになりますか?」 「既婚者ってモテるんですよ」股代が真っ黒な声、高めの音圧を倉庫中に響かせる。「刑事さんはひとつ間違っていましたよ。私は結婚をし…

店長はアイス 幸福の克服2-10

「あのう、店長、リペア対象の商品を回収に行くかなくても良いですか?お客様とのピックアップの約束に間に合いませんよ」 「林道さんもこちらにどうぞ」 「店長?」 「……」 「さあ、役者は揃いましたね。どこまで話しましたか?」 鈴木が手を挙げて言う。「…

店長はアイス 幸福の克服2-9

「大嶋氏が置いたとしてそれを犯人が持ち去らなかったと仮定すれば、それは犯人が本の事実を知っていたことになります。本の存在は公には公表されていません、事実はここに刑事たちと鑑識、それに現場に駆けつけた数名の捜査員ぐらい。外には漏れていない。…

店長はアイス 幸福の克服2-8

「熊田さんがファンキーすぎる」鈴木が言う。 「さて、ここでもひとつ課題が持ち上がりました。そう、大嶋八郎は殺害を手伝った、あるいは殺した人物です。動機の面から紀藤香澄を殺す大嶋八郎は妥当です。しかしその次はどうも繋がりません。彼の近辺で彼を…

店長はアイス 幸福の克服2-7

「その通りだ。頭蓋骨は放射状に割れていたのではない。局所的な穴が開き、その周辺に僅かにひびが広がっていた。人体は固定された状態で凶器が衝突、これが鑑識の見解です。ただしかし、どうにも腑に落ちません。よく考えても見てください。同じ場所で同じ…

店長はアイス 幸福の克服2-6

「そういう考えもあるでしょう。ただ、ここでは当てはまりません。何故か。大嶋八郎氏は一途に彼女を慕ってたからですよ、ベクトルの向かない行為対象にそれも死を持って後を追うでしょうか。死んだのですから、自殺なら説明がつきますけど、他殺の可能性も…